高田清太郎ブログ

NO.15 「ゆきん子ペンギン」・・・・”雪国”表現した教会堂



エッセイ

あたりまえな形、見なれた形、不思議な形。この世には、さまざまな形が存在いたします。偶然にその形になったのではなく、その形になるまでには、必ず多くのコンセプトが存在いたします。私達は時々勘違いして表面上の形と形のやりとりに終始しがちです。
長岡ルーテル・キリスト教会堂建築計画のお手伝いをさせていただいたのは、今から十年前のことでした。初めての教会堂建築で緊張したり、夢膨らんだりで、 内容も盛りたくさんになり、当初なかなか形になろうとはしませんでした。そこで建築の原点「建築は建設地の地域性や気候風土に根ざしたものとして初めて存 在する」というところから仕切りなおすことになりました。

そもそもキリスト教会自体も自然環境、気候風土やそこに住まう人々の生活観と密接に関係して存在してきたのですから、なおさらのことです。実際に、 世界に点在しているキリスト教会堂建築はその地方性を豊かに表現し、特徴を出しています。そこで当プロジェクトも「雪国には雪国の個性ある形を!」と、雪 国の教会堂を前面に出すことになったのです。
プロセスの中でイメージとして浮かんできたのは雪けさをかぶった「雪ん子」と、寒さに強いかわいい動物の「ペンギン」でした。やがて、この二つのキャラク ターが組み合わされて「ゆきん子ペンギン教会」計画と呼ばれ、作業が進められることになりました。落雪型の屋根は急こう配<ハード>で雪ん子のイメージ <ソフト>とピッタリ。室内のアール壁や天井は雪ん子の優しさを表現。また当建築計画が三十年近くも前からありながら一進一退を繰り返し、のろのろ歩きの 歴史<ハード>を持っているところから、ヨチヨチ歩きのペンギン<ソフト>と重ね合わせたものです。
アプローチの柱はペンギンの足、三角形はりはペンギンの羽を見たてたものです。長いポーチは雪国独特の雁木(がんぎ)空間を形成し、地域性を表現してくれ ています。「ゆきん子ペンギン」はネーミングにとどまらず、デザインモチーフへと昇華していき、いすや照明器具にいたるまで楽しさを提供してくれます。
このようにソフトはとても大切です。同時にソフトはハードによってはじめて形化するものです。形はつくるまでは、人間の制約を受けますが、つくられた形は 逆に人間を制約する空間として形が残るだけになってしまうこともあります。イメージと形が一致したときこそ、住まいづくりの成功といえるのではないでしょ うか。目で見える形の向こうには、見えないことば(イメージ)が存在するのです。