高田清太郎ブログ

新潟県内で一番最初に張弦梁工法を採用したのは高田建築事務所である。



建築/巣舞.間知.趣舞

県内で一番最初に張弦梁工法を採用したのは高田建築事務所である。(斎藤先生)
張弦梁工法は新潟県で一番最初は高田建築事務所。二番が長岡市防災センター

長岡市は新潟県中越地震の被災を教訓として防災性の向上を計り、長岡防災シビックコア地区の整備を進めている。
その内の、ながおか市民防災センターが完成・オープンした。
機能は三つから成り立っている:
1. 屋根付き広場機能(1F)
2. 子育て支援機能(1F:こそだてのえき:ぐんぐん)
3. 防災センター機能(2F)

屋根付き広場は、雨雪の日にも自由に遊べる無柱の大屋根空間を、多段式張弦梁構造を用いて実現している。直径24.8mの屋根は直径8mの中央リングと12本の放射状張弦梁にて接合されている。(圧縮力を受け持つ上弦材はH鋼であり、それなりにごつく見える。対する引張力を受け持たせているタイロッドテンション材の線材デザインは腕見せ所でもある)
積雪荷重は、250cmX3kg/㎡・cmX0,7=525kg/㎡で計画されている。
この度、斎藤公男日本大学理工学部名誉教授のお声がけで完成現場を見ることが出来た。

斎藤公男先生は構造家であるが、構造デザイナー・ストラクチャーデザイナーである。研究室は張弦張構造では日本の草分けであり、斎藤研究室から巣立った先輩後輩が全国で活躍している。その現場の一つが多段式張弦梁を採用した長岡防災センターである。

担当したのは松田平田設計の森田明さん(斎藤研究室1994年卒)である。同じく小野里匡章さん。新日鉄エンジニアリングの徐蕾さん・田端英樹さん・平林竜次さん。
新潟県長岡地域振興局の保科正晴参与〔1981年卒〕、長岡地域振興局からは更に2名参加。
我が社からもスタッフ約10名が参加した。

2~3人で集まる会かと思ったら、結構多くの皆さんからおいでいただき資料は少なく申訳無いと前置きがあり、長岡市建築住宅課の野瀬さんの計画の全容報告から話が始まった。
この様な機会は、長岡市内では中々なかったのでとても有意義でもあった。

大空間を得るためには様々な工法・構造があるが、張弦梁構造は私も好きなストラクチャーデザインのひとつである。

直接、防災とは関係なくても子育ての駅としてはピッタリの楽しむストラクチャースペースとしても期待できるものであった。

現場視察の終わり近くに斉藤先生から研究室OBに向って、「新潟県で一番、最初に張弦梁の構造を採用したのは高田建築事務所だよ。しかも自分の事務所だよ。みんな帰る前に是非とも見ていくように」と言う事で研究室の後輩が数名、忙しい中、来社してくださった。規模は大変小さいのであるが、斉藤先生のコメントではとても綺麗な構造デザインがされていると言ってくださった。上弦材は木材(米松集成材)である。親父の代から材木店・製材業を営んできたことと小規模であることから木材を使用する仕様になったのは極々自然であった。

「新潟県で一番、最初!」と言う響きがとても美しく感じた。竣工年は1994年(今から16年前)竣工である。研究室同期(1973年卒)の岡村金蔵君と取り組んだ作品であった。

モクードと命名された設計室は7間X7間(12,74m矩形無柱空間)であり、木造の張弦梁構造である。雪荷重は1.5mである。それでも、450kg/㎡の積雪荷重はやはり大きなファクターであった。
モクード=MOKU+WOOD〔木とウッド〕のハイブリッド造語である。

とかく建築は意匠デザインと構造は別々に認識されていたが、構造それ自体が持つ力の流れは意匠をはるかに超える、又は協奏するエネルギーを持っているからである。

折角の構造美を隠すのではなく、意匠として表すことを進めてきた全体を総称して弊社では「モクード」と呼んでいる。

「流れ」と言う言葉がやってきたのが研究室をどこにするか?悩んでいる大学3年次であった。建築をやめたいと思ったこともあり、その年の夏休みに北海道自転車旅行30日一人旅に出かけて、「心の流れ・空間の流れ・力の流れ」という、今までむだかっていたものがスーッと抜けるようなバイブレーションを感じたのであった。しかし、まだそれをまとめて上手く言葉で表現できないのも事実である。

弊社の85%は住宅建築である。しかし、部分的ではあるが、弊社のデザインには時々構造の持つダイナミックなストラクチャーデザインが小規模建築・住宅建築レベルにも採用されることが多々ある。その時に、あらためて斎藤研究室の出身であることを確認する者である。
「美しい空間の裏には、必ずと言って良いが美しい力の流れがある」と確信している。
斎藤公男先生初め関係者の皆様、この度はご案内頂き有難うございました。

   長岡市防災センター外観(左)      多段式張弦梁のセンターリング       ちょっと角度を変えて

  センターリングを真下から         参加者記念撮影

 高田建築事務所内観モクード モクード木造張弦梁中央リング  美しい力の流れには美しいデザインが潜む