上越市で感じる近代数寄屋
日々のこと

この記事を書いた人
新潟営業所 設計 古市
一級建築士 / 気密測定技能者
長岡市出身。
最近行って良かった建物:旧小林古径邸。
最近読んで面白かった本:「ラーメンと瞑想」🍜。
最近のルーティンは、朝起きたらメジャーリーグの速報を観ること。今年の目標は運動不足の解消です。
3月、上越市高田城址公園内にある小林古径記念美術館を訪れました。
美術館と、旧小林古径邸、旧画室からなる施設になります。
小林古径は上越市出身の日本画家。
元々は東京都に建てられた、小林古径邸ですが、平成5年に移築保存を前提に解体。
平成7年に上越市が解体部材を購入し、平成13年に移築復元がなされました。
また、元々隣接していた画室は、解体部材が残っていなかったため、再現されています。
設計は、吉田五十八、大工は岡村仁三。
小林古径(以下 古径)は吉田五十八(以下 五十八)に、「私が好きになるような家を作ってください」という要望だけを伝えたそうです。
そこから五十八は、古径の人柄や芸術について研究し、この住宅を作り上げました。
東京から、豪雪地帯の上越市に移築するにあたり、屋根に融雪ヒーターを入れるなどの工夫がされているそうですが、全然気づきませんでした。
外観(「写真1」)では、2階手前側の格子窓(虫籠窓)や、奥に見える柱(装飾用)など、アクセントとなる要素を意識して作っています。
建物に入ると、まずは客間が配置されています。
客間には、漆塗りで仕上げられた室内窓があり、ゲストを迎える格式高い空間になっていました。
奥に見える柱は、全ての面が柾目になるように作られた、”八方柾”の柱。
廊下は畳廊下、自然光を頼りにしていて、どこにいても部屋のような落ち着きがあります。
五十八の、後の住宅ではあまり見られない腰貼り(壁の床付近に貼られる和紙)が採用されています。
塗り壁のグレーに、白いアクセントが効いています。

「写真4」廊下より書斎を見る

「写真5」書斎より客間を見る

「写真6」客間より書斎を見る
廊下から書斎への入り口はアーチ型、開口部は光を調整できるように猫間障子になっています。
書斎は、丸太柱に、葭簀子煤竹小舞天井。数寄屋建築において「草」と呼ばれる最も自由で自然を感じられる作りです。
塗り壁は、移築前の資料を参考に再現したそうです。
写真右手側が、手前から居間・茶の間です。
茶の間からは、庭が見えます。半入側(縁側)の部分は一部板張りを残し、畳が敷かれています。
建具がつくる境界と、床がつくる境界のズレに、空間の広がりを感じます。
茶の間には、座椅子が1つ置かれていました。
庭を眺めるには最高の場所だなと思います。ガラス障子は桟が少なく、庭への視線を妨げない且つ、プロポーションも良いです。
私は、「写真7」の空間がとても気に入りました。
お家にこんなスペースがあったら、ずっとここにいるんだろうなと思います。

「写真9」面取りのRを変えて作られた階段踏板

「写真10」2階個室の面皮柱

「写真11」画室
隣接する画室は、根太を並べた天井。太い丸柱が並び、その外側に2面にわたって水平窓が連続しています。畳は、邸宅とは異なり縁無し。モダンな空間になっています。
画室は、五十八が農家を改修したものになっていたため、特に玄関にはその面影が感じられる面白い建物でした。
「写真1」に見る意匠的な線や、「写真2」「写真7」に見る障子などの線。
線を無くす事も美しいですが、線があることの美しさについても、注意して設計したいと思いました。もしかしたら、「落ち着く場所」の正体は、そういった線にあるのかもしれないとも感じました。
小林古径記念美術館は、作品、生活の場、制作の場と、暮らしから作品まで鑑賞できる素晴らしい美術館でした。
上越に行った際は、是非古径の暮らしと芸術に触れてみてください。
URL: https://www.city.joetsu.niigata.jp/site/kokei/kokei-info.html
新潟営業所 設計 古市
新潟・長岡で注文住宅・リフォーム・店舗・福祉施設の設計なら/高田建築事務所










