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建築がまちを語り継ぐ場所 ―旧宮崎酒造店舗兼主屋―



日々のこと

先日、まちおこしに携わる友人に紹介され
富山県滑川市の旧北陸街道沿いに佇む「旧宮崎酒造店舗兼主屋」へ行ってきました。
瓦屋根の重みと格子戸の影が織りなすその姿は、単なる古い建物ではなく、
「まちの時間」を宿した存在です。


城戸家住宅主屋

滑川市 HPより引用

  

――建築が物語る、暮らしの知恵と誇り――

建物は木造2階建て、切妻造り、桟瓦葺き。
間口およそ14メートルという大規模な町家で、内部には「トオリニワ(通り庭)」が通り抜け、
奥へ進むにつれて店、居間、座敷と用途が変化していきます。

  

この構えは、北陸地方の商家建築に多く見られるものです。
冬の湿気や雪を考慮し、風と光を通しながらも、人の行き来をスムーズにする
「内と外の中間空間」を巧みに生み出しています。

建築を通じて感じるのは、「機能性と美しさが共存する“用の美”」です。
柱の太さ、梁の組み方、土壁の質感。
どれもが、長年の暮らしに寄り添って磨かれてきた造形。
そこには「どうしたら長く住めるか」「どうしたら商いが続くか」という、
先人たちの知恵と誇りが刻まれています。

かつて本陣として旅人を迎え、のちに造り酒屋として繁盛したここは、
地域の文化拠点として再び息づいたようです。
この変化の背景には、「建築を守る人」だけではなく、「建築を使ってまちを動かす人」。
つまり「プレイヤー」たちの存在があります。

――建物は、誰かが関わることで生き返る――

かつての酒蔵は、長い間閉ざされたままでした。
しかし、復元工事をきっかけに、地元の住民、職人、行政、建築家、
そして地域の若い世代が関わりはじめたそうです。

「古いけれど、ここで何かできるかもしれない」
その一歩が、建物を“保存対象”から“活動の舞台”へと変えていきました。

建築に命を吹き込むのは、人の行動です。
人が出入りし、語り合い、企画を生み出し、そこに“日常の熱”が戻ってくる。
その瞬間から、建物は再び「まちの一部」として呼吸を始めるのです。

――まちづくりに求められる「プレイヤー型」の人材――

これからの時代に必要なのは、“計画する人”よりも“動かす人”。
肩書きや職業を越えて、自ら考え、動き、巻き込む存在と思います。

旧宮崎酒造の再生も、専門家だけで成し遂げられたわけではありません。
カフェ運営者、地元の学生、職人、デザイナー、地域NPOが、
それぞれが自分の得意分野を持ち寄り、実験的に場を使い始めたことが、
今の“開かれた文化財”という形につながっています。

プレイヤーに必要なのは、「完璧な答え」よりも「試してみる勇気」。
まちづくりの現場では、正解よりも“対話”が価値を持つ時代です。
その対話を生み出すための第一歩を踏み出すこと。
それが、新しい地域プレイヤーの役割と感じます。

――行動が風景をつくる――

建物は、時間の経過とともに姿を変えます。
しかし、その変化をどうデザインするかは、人の行動にかかっています。

イベントを開く人、修繕を担う人、写真を撮って発信する人、ただ立ち寄ってお茶を飲む人。
それぞれの関わりが積み重なり、まちの風景をつくっていきます。

旧宮崎酒造の周辺では、若い世代が空き家をリノベーションし、
クラフトイベントやマルシェを開く動きも広がっているようです。
古い建物が“使われる風景”は、まちの表情を明るく変えてくれます。

  

つまり、まちを変えるのは人の行動そのもの。
プレイヤーの一歩が、風景を変え、地域の記憶を次の時代へと運んでいくのです。

――「共に使う」まちづくりへ――

これからのまちづくりは、「守る」や「開発する」といった二項対立ではありません。
大切なのは、「共に使う」という考え方です。

建物の持ち主、行政、地域住民、企業、学生など、立場の違う人たちが、
少しずつ関わりながら場所をシェアする。
そこにこそ、新しい公共性が生まれると考えます。

――未来をつくるのは「誰か」ではなく「あなた」――

旧宮崎酒造店舗兼主屋が、いま再び光を放っているのは、
行政でも建築家でもなく、まちに生きる人たちが“動いた”からです。

古い建物を見て、「誰かがやってくれるだろう」と思うのか。
それとも、「自分にできることをしてみよう」と思うのか。
その違いが、10年後のまちの姿を左右すると思います。

これからの時代、必要なのは“参加者”ではなく“プレイヤー”。
完璧でなくていい、まず一歩を踏み出すこと。
建物の掃除でも、企画の提案でも、小さな声の共有でも構いません。

行動する人がいる限り、まちは動き続ける。
建築は、その動きの舞台であり、証人であり、希望そのものです。

このまちは、まだまだつくり続けられています。

 

長岡本社 フォレス・タカダ 風間
新潟・長岡で注文住宅・リフォーム・店舗・福祉施設の設計なら/高田建築事務所

 

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