新潟県出身の建築家 前川國男の建築を巡る
日々のこと
新潟県出身の建築家、前川國男をご存じでしょうか。
世界3大建築家として知られる、ル・コルビュジェはご存じの方も多いかと思います。
前川國男は、コルビュジェの元で経験を積み、日本のモダニズムを牽引した建築家の一人です。
代表作として、東京文化会館、神奈川県立音楽堂、東京都美術館、国際文化会館などがあげられます。
実は、そんな前川國男の建築を、新潟県内でいくつか見ることができます!
少しマニアックですが、今回は簡単にご紹介していきたいと思います。
■新潟市美術館(新潟市中央区西大畑町)
まず1つ目は、新潟市美術館です。
現在は改修工事のため休館中です。
新潟市美術館は、前川國男の最晩年の建築であり、前川建築の集大成ともいえるのではないでしょうか。私が、新潟市美術館が大好きなので、そう思っているだけかもしれませんが。
西大畑公園と併せてデザインされています。公園には、かつての新潟を連想させる堀や柳が設けられ、幼少期を新潟で過ごした前川國男ならではの設計となっています。
公園の堀は、美術館中庭の堀と軸がそろっており、公園との繋がりが演出されています。
展示空間のボックスが雁行し、奥の作品への期待感が高まります。
内部の写真はありませんが、敷地の環境をうまく取り入れた設計になっています。
展示空間へのアプローチは敷地の高低差を活かして、緩やかな上り坂となっています。
緩い上り坂によって、その先に待つ展示空間への期待感が高められているのです!
新潟市美術館の外壁は、前川建築の特徴といえる、打ち込みタイル工法という工法で作られています。
普段じっくり見ることはないですが、こうやってみるとそれぞれ色が違って味わいを感じます。このオリーブ色も、木々になじむ色でとても良いなと思います。
■長岡ロングライフセンター (長岡市日越)
続いて、長岡ロングライフセンターです。高齢者の方々が集い、体を動かしたり、レクリエーションをしたりするための施設です。
こちらも、自然の中に建築されており、やはり庭と併せて設計が進められたのだろうなと思わされます。建物内からは、庭に植えられた多様な木々を望むことができます。
屋上庭園
近代建築の勉強をしていると、よく「屋上庭園」という言葉を聞きますが、私はここで初めてそれらしき空間を見ることができました。
力強い屋根に、かわいい照明、床に対する屋根の大きさなど、とてもバランスよく計画されているように感じます。
ここから長岡花火を見られたら、とても気持ち良いんだろうなと思います。
体育館の天井には青が使われています。力強い構造体や設備と、鮮やかなブルーが共存しています。難しそうな色をあっさりと共存させていて、とても勉強になります。
外水栓も素敵にデザインされていました。「Long life center」の「L」なのではないかと思いましたが、真相は分かりません。
長岡に前川建築があることが驚きでしたが、このデザインを見て確信しました!
新潟市美術館や、次にご紹介する長岡市北部体育館でも見られる納まりです。
ガラスを引っ込めて、壁を庇のようにしているとのことです。また、上部のアーチが柔らかい印象を作っています。雪国だからこそ生まれたデザインです!
■長岡市北部体育館 (長岡市東蔵王)
長岡市北部体育館。高校の部活で毎週のように通っていましたが、まさか前川建築だったとは知りませんでした。
窓のデザインや、軒下空間のデザインに、前川さんらしさを感じます。
ロングライフセンターと見比べると、共通点にいくつか気づきます。どんなところが似ているか考えてみると面白いかもしれません!このエントランスでよく迎えを待っていましたが、広い軒下空間というのも新潟らしいなと感じます。
また、内部にもたくさんのこだわりポイントがありますので、足を運んだ際はぜひ探してみてください!
~県外編~
■宮城県美術館
宮城県美術館。こちらも現在リニューアル工事によって休館中です。
仙台の豊かな自然とともにデザインされ、シンプルな形の中に美しさが詰まっています!
■福岡市美術館
福岡市の大濠公園内にある福岡市美術館です。
新潟市美術館や、宮城県美術館との共通点がたくさんあります。
敷地の高低差を利用していたり、大濠池とのつながりが考慮されていたり、とても前川さんらしい建物です。
今回は前川建築を紹介してみました。
設計者の特徴などを知ったうえで建物に行くと、今まで以上にその場所が好きになります。
ぜひ、前川建築を巡って、その共通点や、自分の好きなポイントなどを探してみると楽しいかと思います!
新潟営業所 設計 古市