高田清太郎ブログ

NO.53 「居間から家族の間へ」・・・・重宝する畳 和洋混在に



エッセイ

型に設置されたソファと、カーペットと同居するパッチワーク式畳(左上)。

和室8畳から張り出す不整形な畳部屋(右上)。バリエーション豊かなプラン二ング(左下)。

和室に山のシルエットを持つ床の間を配した(右下)

 

 

居間について考えてみましょう。英語で「リビングルーム」、同義語として「スィッティングルーム」、直訳すると「座る部屋」です。「座る」道具としてソファやチェアを指すことになります。
一方、日本では「座る」は「床の上に座る」ことを意味し、床材で重宝される材料の一つに畳があります。適度な硬さと軟らかさをもち、その感触の良さは他を抜きんでています。
プランニングするときは、板張りのフロアにソファやチェアが置かれた洋式の居間を“リビングルーム”と呼び、畳がしかれ、座卓やこたつが置かれた和式の居間を“茶の間”と呼ぶことで、より鮮明に居間を考えることができそうです。

しかし、私たちはコーヒーとケーキでリラックスするときもあれば、ほうじ茶とお饅頭でくつろぐときもあります。衣食住のボーダーレスグローバル化 は浸透し、日本人の生活スタイルも現在ではまさに和洋混在といったところです。そうであれば居間という空間スペースも洋と和に分けずに、積極的に混在させ てみたらいかがでしょう。
W邸は、箱型・パズル型の空間づくりを極力排し食堂、居間、和室を独立しながらも不整形に連結しているのが特徴です。ワンルームで回れる動線になっているので、空間にも広がりと面白さ、そして柔らかさが生まれています。
十畳大の居間空間は、和室八畳との続き間として使うこともできますし、食堂、台所と連続して使うこともできます。
居間に敷かれている畳はソファと並んで家人がどちらにも座ることができるように対応しています。和洋混在のスィッティングルームの立役者と言ってよいでしよう。
畳の織り成すさまざまなバリエーションには本当に重宝します。ある時はテレビシアター。夕暮れには座卓を囲んで家族だんらんの声が聞こえそうです。そし て布団を敷けばごろりと横になれる寝室にも変身するのです。その時々に使い方が変化し、室名にとわれない暮らしができます。
形式にこだわらない住まいづくりは、私たちの生活の仕方、住まい方にも投影されるのです。
居間はむしろリビングルーム、茶の間という呼び方より、その時その使われ方で百変化する「家族の間」と呼んだ方がよいのでしよう。