高田清太郎ブログ

NO.66 「LDKからの脱却」・・・・間仕切りせずにゆとりを



エッセイ

層にスキップするメゾネットマンションの

室内(左)、渦巻き状に広がるプラン(右上)、大きなワンルーム空間は、らせん状につられた構造(右下)

 

 

建築用語が日用語になっている例に「仕切る」「間取り」 などがあります。 「仕切る」は壁で隔てたり区切りをつけることですが、一般的に使われる仕切るは「会を仕切る」というふうにいったん結論を出したり、まとめたりする意味に 使われます。 「間取り」は部屋の配置をいいますが、日常では「間を取る」というと距離感を取る、タイミングをはかることを意味します。間の取り方を「間違った」り、間 に対する感覚が欠如した人を「間抜け」というので特に注意が必要です。
格式を重んじる時代には、ひとつひとつの部屋にきちんと区切りを付けたり距離感を取ることはとても大切だとされてきました。しかし最近では、部屋と部屋とのつながりや、家族のコミュニケーションは最も重大な課題でもあります。
私の好きな住宅に建築家ブルースガッフの作品があります。キッチンを中心にらせん階段状にスキップした形で個室が配置され、平面的にも断面的にも間仕切りはなく家全体がひとつの大きな家族の間という設計です。

アパート・マンションは一般的に○○LDKという表現が使われます。使い方より間仕切りされた部屋数がその物件の価値を決めると考えられているか らです。しかし実際に生活すると部屋数の多さより、必要に応じて組み合わせのできる間取りや全体の中でゆとりを持った空間の方がずっと大切になってきま す。
15年前にお手伝いしたメゾネット型マンションは、全戸2階北側に入り口を設け、玄関ホールとリビングをスキップさせプライバシーを確保。吹き抜けのあ る南向きのリビングは、自然光があふれ南北の風が通る気持ちのいい空間になりました。部屋を上下にスキップさせることで、6畳分のギャラリーロフトも生ま れました。
このようにアパートやマンションも多様化し、上下の中間領域や多用途空間など、平面的には数字に表すことのできない空間も求められてきています。あいまいでいろんな余地のある空間が、ゆとりの空間として認知されてきたからだといえるかもしれません。
住まいの呼び方や考え方も○○LDKという数の原理から脱却し固定概念にとらわれず自由な間取りに価値を求める方向に進化してきたのです。