高田清太郎ブログ

雪割の役割は雪を割る役!雪割草は春を告げる役!凍み渡りは足場の役も!



エッセイ

“天災は忘れたころにやってくる!”と寺田寅彦氏言った。予期できる天災はまだしも突然予兆もなくやってくる災害こそ恐ろしいことである。雪害の中でも雪崩は突然にやって来るので対応できないく被害も相応に大きくなるが、屋根雪処理対応に於いては地震と違って一瞬にして積もるわけではなく時間的に余裕があるから対応はしやすくもある。それでも屋根雪下ろしは人力に頼っているのが現実である。雪下ろしは同時期に行われるので人手不足は避けられない。人足不足人災である!
構造計算に確りと裏づけされた耐雪構造以外の屋根雪をそのままにほっておくと様々な被害が発生する。物損だけで済めばまだしも人身事故となれば大変な悲しみである。
もうすでに今冬、新潟県内でも24名の命が奪われた。全国ワースト1である。しかも65歳以上の方が、屋根雪下ろし作業中に転落死するケースが圧倒しており、3人に2人を占めているらしい。正に天災・人災である!
2004年の中越地震の時もそうだった様に一口に大地震と言っても様々な状況で被害内容や大きさは異なるのである。同様に雪害といっても災害の起こる時の雪の質や降るスピードで被害状況が全く変ってくる。
であるから、一回一回毎に現実の災害を通して私達は学ぶものが多くある。又その災害の時にしか学べないことも多々である。
特に雪国では雪害が避けて通れない。
屋根雪の問題一つとってもそうである。

① 第一次被害:直接的構造への危害:荷重で構造が破壊されることがある。実際に倒壊する家屋の報告が今年も1軒や2軒ではなかった。・鼻垂木が折れる例はそれこそ沢山ある。・折れないまでも雪荷重の撓みで 建具が動かなくなる。(実際には1/300Lまで撓んでも荷重を取り除けば構造は復元するのであるが、構造的に弱い建物とレッテルが貼られてしまう?・構造の掛け方チェックは重要である)

② 第二次被害:勾配屋根の上の雪は滑り落ちようとする力が働く。横移動しようという働きでアングルが外れたり、樋が落下したり、樋止め金具がミシン穴みたいな働きで鼻隠しを割裂させたりして破壊しているケースも見受けられる。

③ 第三次被害:落雪で被害を被ることへの対応:堆雪スペースが無いと隣地に被害を及ぼす。落雪飛距離内で人的・物的被害は?(特に固まった雪は大変な被害を及ぼす可能性がある)
   小屋梁が雪の重みで屋根ごと落ちて倒壊:みしみしと言う音がしたので雪下ろしを始めた最中に落ちたらしい。骨折者一名!

*早めに対応しておくと後々助かることも多々ある。しかし大きく塊となると次に落ちる時には、大きなエネルギーとなって破壊力を発揮する。もしそこに人がいたらと考えるとそれは恐ろしいことである。
弊社プレカット工場の屋根は自然滑落雪方式をとっている。屋根板金が錆びると中々落ちない。昨年末に雪対策として錆び付いた板金を張り替えることにした。錆びにくい鉄=ステンレス製を採用することにした。張り替えた年は、降り始め雪と馴染まず落下し難いと言われている。更に暖気の時の雪であれば降る先から落ちてくれるのであるが、外気温が零下にもなると雪は鉄板に表着して落ちなくなる。(特に零下4度C以下になると金属はものを吸着する力を持つといわれている)
やがて暖気になると落雪してくれるのであるが、零下の日が続けば何日も落ちなくなる。多くなった雪塊は小刻みに落ちる雪と違い落ち始めると大きな落下エネルギーとなる。もしそこが道路であり通行人がいれば人命に関わる事故になりかねない。
特に落雪式屋根の場合は堆雪スペースも含めて注意が必要である。
勾配屋根は傾斜がついているから止まる事はしない。しかし屋根棟は水平である。そこに溜まった雪は中々落ち難い!そこで雪国人の知恵で雪割をつける形になる。デザイン上いいばかりではないが、落雪式では避けて通れない処方でもある。
  
雪割の役割と書くと正に役割と言う語源が、ここから生まれたのではないかと思うほどである。雪割りは「割る役」であるから。
最初に落雪式を30年ほど前につくらせて頂いた時は、長岡市内にはまだ手本が無く、魚沼の地域まで見に行ったように思う?(今思い出そうとしても、どの家を見たかは定かではないが。)

 
雪と格闘話が続いた。2月下旬に入る。日一日と暖かさが増してきた。もう直ぐ春。木々の蕾もスタンバイである。
それでは、ブログも春バージョンにスタンバイ!冬バージョンよバイバイ!
・・・・と思いきやちょっと待った!
雪国の人々は忍耐ばかり強いられているように捉われがちであるが、そんな事はない。全ての景色は白く塗られ、私の気持ちを取り巻く風景を精練してくれる。何よりも空気が上手い!身体を動かすウィンタースポーツは、雪国人にとっては日常の楽しみの一つであり!春先の雪国の散歩の楽しみがこれに加わる。
凍み渡りである。2月8日今年初めての凍み渡りが出来た。(私設観測地点内に限るが)そして本日2月20日は完璧な凍み渡りデーである。道路上でしか出来なかった散歩が田圃の上でも小川の上に覆いかぶさった雪原でも自由自在に私の行動範囲を許容してくれる。(既出ブログ20100223参照)
  

そして、更に凍み渡りの役割の新しい発見をした朝はもっと楽しい。我が町内の公民館の軒裏が蜘蛛のヤジで大変汚くなってきていた。長い箒で落とそうとしても中々難しい。時には足場がいるくらいである。
ところが、自然落雪屋根から落下した雪が軒まで届きそうである。そして、凍み渡りと重なるとれっきとした足場に一大変身である。
若い所員が箒を持って軒掃除をしてくれた。めでたしめでたし!
3月まで、まだまだ楽しむチャンスはたくさんあるから、こちらもスタンバイである。
  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そして!
越後の長く厳しい冬を耐え抜いて可憐な顔をのぞかせる「雪割草」。
その花言葉は、「はにかみや」。地面から湧き上がる生まれたての春をさがしにでかけませんか。・・・・と「えちご雪割草街道のご案内」が届く!
雪を割ってでてくる植物!
越後雪国植物園では、その感動に出会える季節までもう少し!

 
*さてさて余談であるが、弊社でお手伝いさせていただいているサポートセンター摂田屋や美沢が、NHK教育で放映されました。番組名は「福祉ネットワーク」である。再放送が2月23日(水)12:00~12:30である。是非ともご覧いただきたいところである。