高田清太郎ブログ

「時の間」「時間のスペース」正確な時刻:デジタル時計・バイオリズム時計



エッセイ

その日は出かける前に新幹線ダイヤを見ていた。
長岡から大宮~つないで~大宮から仙台行きである。
何時もの様に貧乏性である。出かける前にも目一杯予定仕事を入れておく。何時もの様に時間に余裕がないのである。
午後一で仙台に着かなければならない。電車のつなぎを調べていたらジャストフィットの新幹線が出てきた。しかし、それは同時刻である。同時刻である事であれば無理である。
しかしふっと考えるとダイヤは出発時刻をのみを示している。委細の書かれたブック式時刻表なら着時刻も確りと書かれてはいるものの。発車時刻の書かれた時刻にはスペースがあるのである。
上越新幹線は大宮で10:10東北新幹線は大宮から10:10発である。
上越新幹線はその前の時間に着く。きっと10:09なのだろう。そうだとすれば1分間のタイムラグがある。1分しかない。ではなく1分もあれば大丈夫!と思いきやその電車は混み合っていた。気が付いたのが遅かった。いつになく自分が車両の真ん中に追いやられているのを覚える。いざ、大宮に到着した時には出るに出られない混みようであった。漸くプラットフォームに出た時には30秒ほど経ってしまった。
急いで隣のプラットフォームに走る。階段の下・上走りにはかなりのエネルギーが要った。
階段トップに着くと同時にドアが自動閉鎖した。ア~~ア!致し方なく、予定の小一時間待ちの次の電車を待つことにした。
正確な時刻の素晴らしさをこの時だけは悲しんだ。
交通機関のダイヤを見るときには発時間しか書いてない。着時間は当然その前にある。1分なにがしかのゾーン空間がある。「時の間」である。

散歩道で出会う電車がある。5両編成の電車である。上越線のぼり電車である。その電車が踏切を通過するのはジャスト6:42である。
冬期間の散歩はいつのまにか6:42の電車が私の時計になっている。ともかく正確なのである。一分は絶対に違わない。素晴らしいことである。散歩している度に感動しているのである。
踏切からの遠近で私が出かける時間の早い遅いが証明されるのであるから。
いつぞや海外に出かけるときには時刻はいい加減だと聞いた。しかし、日本に来た外人さんがほとんどびっくりする日本の風景の一つに交通機関の時間の正確さに驚愕すると聞いた。
台湾人の金美齢氏もその一人である。講演題目は「日本再生への提言」であった。
日本人の国民性の素晴らしさ:例えば大惨事が起こるごとに日本以外では暴動や盗難が起こるのに日本ではほとんどそのようなことが起こらない。秩序正しく、お互いに力を合わせて復興に向かう姿勢にただただ脱帽だと言っている。(勿論、対応の如何によっては不満の続出は致し方ないとしてもである。)
1895年から1945年までの50年間、台湾は日本の統治下にあった。その時、日本は搾取する他国とは違って日本と同じインフラ整備に取り組んだり、教育にも日本化を目指しレベルアップを図っていた。
日本人の特徴は真面目で勤勉、向上心、信用、約束、公を大切にする。
日本人に接する外国人のほとんどが日本人の勤勉さに驚愕するという。一つの現象として、電車のダイヤと実際の運航時間である。ぴったりである。この一言である。

10数年前、手にした書籍に「真実の瞬間:SASのサービス戦略はなぜ成功したか?」ヤン・カールソン=著があった。
1980年代のスカンジナビア・エア・システムの経営状況は大赤字の真っただ中であった。トップに抜擢された若き経営者ヤンカ―ルソンはSASの使命は何か?に真正面から取り組んだ。様々な取り組みは全て顧客満足に向かっていた。
その結論の一つに「運行時間の正確さ!」に行きつくのである。かつて北欧にやってくる利用者はほとんど観光客だと思っていたと言う。トランジットが必要とされる便の場合には前の飛行機が到着してその人々を載せるのを待って出発していた。ダイヤはあったが、出発時刻の決定は海外の各地からやってくる各航空会社の到着時間であった。
何故か?最大の理由は、「SAS利用の乗客のほとんどが観光客だと思っていたからである。」
観光客に対するサービスとして、少々時間を待ってもらっても喜ばれると判断していたのであろうか?
ところが乗客分析をしたところ、なんと乗客の90%以上(?)がビジネスマンであったという。
ビジネスマンが求める顧客ニーズの第一を「正確の運航時刻」であると位置づけた。そこで、正確な時刻を守ることにした。前便が到着しようがしまいが、構わない。SASは出発時刻を守ります!であった。
結果として利用者はぐんぐん伸びたと聞く。ビジネスマンも前便が遅れれば間に合わないことが分かっているからトランジット繋ぎに慌てることはなくなった?
この物語は、企業使命は?ドラッカー博士のマネジメントの基本的な教えでもあった。
スカンジナビア航空を再生させたヤン・カールソンの事例はサービスマネジメントのどの本にも登場する。書籍の紹介がインターネットでなされていたのでそのまま転記することにする。
・・・「1986年、1000万人の旅客がそれぞれほぼ5人のスカンジナビア航空(SAS)の従業員に接した。一回の応接時間が平均15秒だった。したがって、1年間に5000万回、顧客の脳裏にSASの印象が刻みつけられたことになる。その5000万回の“真実の瞬間”が、結局SASの成功を左右する。その瞬間こそ私たちはSASが最良の選択だったと顧客に納得させなければならないときなのだ。という有名な記述がある。小さな航空会社で成功していたとはいえ、40歳という若さのヤン・カールソンを社長に抜擢したSASの経営陣もすごい。この15秒の「真実の瞬間」の積み重ねが顧客満足を生む。カールソンが考えた「Moments of Truth=真実の瞬間」という大げさな表現こそがサービス産業に働く者を動かす本質をつかんでいると思う。製造業が生み出す製品と異なり、サービスは目に見えない、生産すればその場で消費される。しかし、顧客の記憶には印象としてブランド化される。航空機というサービス産業にとって15秒の接客が大きな価値を生むのだ。」
(しかし、これは大競争前の航空チケットが高価であった時代の話だ。低価格航空会社の出現で、SASなどのサービスは接客だけでなく、乗り継ぎの利便性やホテル、レンタカーなどとの情報提携など付加されるサービスと一体でないと高い料金はとれなくなっている。今はサービス戦略と一体となった「真実の瞬間」が求められているのだろう。)
同じ時間にも使い方次第である。同じ時間にもスペースがある。3次元・4次元の深さがある。

デジタル時計だけではない。私の腹時計もかなり正確である。
目覚め時計も同様である。アラームが鳴る5分前ぴったりと目が覚めるのであるから。バイオリズムクロークはとても重要である。
時は金なり。時は会社を救う。

          6:42キッカリの通勤電車                                                6:42
                旧社長室にある懐かしき壁時計             チックタック・チックタック・ボンボンボ~ン