高田清太郎ブログ

100点と50点の差は?上組小学校の6年生の児童たちと町おこしの会を話し合った。



エッセイ

わが母校:上組小学校の先生から6年生の児童たち97名にお話をするように依頼が来た。
上組小学校の総合学習の授業の中で「地域まちかど美術館」と称して子供たちが作った作品を展示して美術活動をしていきたい。
そこで、お話の趣旨は「今までの宮内・摂田屋のまちおこし(雁木のある街・美のある街)の活動を紹介してほしい」と言うものであった。
小学校6年生は私にとっては丁度50年前のことである。あっという間の半世紀である。
半世紀間でこの町に何が起こったのか?何が起こらなかったのか?歴史の中で関係したこと、無関係でいたこと。切り口はいろいろである。
長い歴史の中では本当に一瞬間の空間の中での出来事に過ぎないが!わが町を正面から対面する機会もそんなに多くはないはずである。頂いた時間が40分である。あまり多くは語れない。一方的に話しても眠くなるだけである。
一点「町おこし」を中心に話すことにした。
摂田屋は歴史のある街である。長年、天領の地として醸造業の町として栄えた。(見方を変えると天領地であるから免税の特典で栄えたとも聞いた。)
年季の入った建物がたくさん残っている。県外から来た方をご案内すると、決まってこんなに多くの蔵も倉が重なり合っている地域も珍しいのではないだろうか!と。
摂田屋の町中上げての最大イベントは何といっても「おっここ市である」。様々なイベントが行われる。お店が並ぶ。醸造業の町がつくった商品が立ち並ぶ。野菜やお米も販売される。酒がふるまわれ味噌汁が配られ参加者はご満悦である。
会場は摂田屋の町全体であるがメイン会場はお酒の吉乃川・長谷川酒造・機那サフラン酒本舗・そして味噌醤油の越のむらさき・星野本店・個性ある味噌作りの星六さんと倉・製造工場を開けての対応である。
毎年、10月の第一土曜日に開催される。これは長岡大手通りで行われる、米百俵祭りと連携しているイベントとして仕掛けられている。
戊辰戦争の時の長岡藩家老は河井継之助であった。河井は独立国を目指して小千谷市にある慈眼寺で西軍指揮官の岩村精一郎と談判に出かけるのだが戦争を避けたい河井と戦争を続けたい西軍とは折り合わず、開戦は避けることが出来なかった。無念やるなき継之助であった。
そして、河井の前線司令基地はこの醸造業の町にある光福寺であった。(私もこのお寺の中で幼稚園時代を過ごす御堂がプレイルームであった)米百俵のイベントに出かける河井継之助隊はこの光福寺からである。大砲にガトリング銃の轟音と銃撃音で歴史の一端を偲ぶことが出来るのである。
・・・・・・・・・・・大体の様子だけにしておかないと児童たちに伝えたかったことが伝えられないことになってしまうので
この辺で閑話休題!

まちおこし=「まち+おこし」について六年生の皆で共通の意識を持つことから始めよう。
① まず、「まち」とはな~に?
様々な意見が沢山出た。人が集まるところ。店も沢山あるところ。仕事するところ。などなどである。
要するに一人・一軒ではない!ことが共通語であった。キーワードは「集まる・群がっている」である。
何気なく出た意見は近代都市計画の手法がそのまま言葉となって映し出してくれているのにはびっくりである。住むところ(ニュータウン)・働くところ(コンビナート・官庁街・商店街)・遊ぶところ(ディズニーランド・観光地)・そしてそれらを繋ぐ交通機関(車・電車・新幹線・飛行機)から成り立っている。果たしてこの住・働・遊・結に機能分化した都市計画は住む人の目線では決して成功したとは思われなかったし言われもしなかった。
「まち」を間知と呼びたい私!集まるから大切な間あい!ま ちは「集まる」ところ:英語ではAssemble!そしてそれは「組み立てる」ことを意味する!
質問を矢継ぎ早に放つ!みんなが好きな街とはどんなところ?この町ではどんなところが好き?古い町・新しい町:新潟と長岡と宮内・摂田屋の特徴?
どちらが居心地がいい?見慣れた町と旅行した時の町?みんなはどんな町に住みたい?
そして質問は「自分の住んでいる街はすきか?」答えは「自分たちの町は好き」であった。今自分たちの住んでいる摂田屋・宮内のまちを嫌う子は一人もいなかった。素晴らしい環境である。
そして振り返ると住む場所・働く場所・遊ぶ場所が混在しているのである。だからいい町なのである。近代都市計画が確りと分離してしまった機能を一緒くたに混在させているまちをジェーンジェイコブさん(フリージャーナリスト:著書に”アメリカ大都市の死と生“)はとてもいい町・犯罪の起こりにくい安全な街だと言っている。
児童達は摂田屋・宮内を居心地のいい町と肌で感じているのである。
人に個性がある様に町にも個性がある。
家々が集まる:集落になる!まちが生まれる!
雪国の個性ある住まいをご紹介する。すまい=巣舞(雪ん子ペンギン教会・やじろべえ住宅・多塔屋根・はさぎの家・フォルクス雁木のある家)
建ち並ぶ家々が景観をつくる。比較=個性ある空間:例題としてスライドは:宿根木・出雲崎・村上・摂田屋・宮内今昔!
時間軸:時代の風景:昔の風景・風景の中で生活している豊かさ!風景の記憶!継続と分断!時代ともに変わる。単なるスクラップ&ビルドは景観から継続性を締め出してしまう。
古い建物:リノベーション!:APM美術館のことをご紹介すると、行ったことある人の目が光る。
おっここ市は祭りである。祭り様々!感謝祭!収穫祭!奉納祭!

② 次に「おこし」とはな~に?
寝ているのを起こす!転んでいるのを起こす!隠れている土の中から掘り起す。様々である。
いずれにせよ共通バイブレーションは?今までに活躍していたのがしょぼくれて記憶から遠のいていくような!いまだ顕在化していないものの様な潜在能力からの引出である。
灯台下暗し!今から8年前に摂田屋は前島長岡駅長によって再発見されたのである。全国に発信!ディスカバージャパン!(外部からのみ見える!まるでブルーノタウトによって桂離宮の美が再発見されたかのように大げさにする必要はないかもしれないが)外で評価されて地元に逆輸入するかのように動くタイプ!
事例を見てみよう。実際に何もしなければ壊れていくのみである。メンテナンスの重要性を毎日学ぶのである。
摂田屋の建物は大きく建て替え期を迎えているにも関わらず幸いにもメンテナンスモードに入っているのはとても嬉しい。
何もしなければ死んでいく建造物が沢山ある。ある農民がこんなことを言っていた。「納屋を取り壊したければ、屋根に45cm四方の穴をあけるといい。あとは放っておくことさ」(建築家クリス・リドル:人類が消えた世界byアラン・ワインズマン著2008年早川書房)
建物を壊すのに機械はいらない。実際に何もしなければどんどん朽ちていく。
私の散歩道に数年前に屋根が壊れた小屋がある。5~6年前からかなり進行しているのを確認できる。屋根の穴から雨が侵入する。壊れた外壁から鳥たちが入り込む。糞をすることで植物の芽が飛び出てくる。
何もしなければ、滅びていく。そのことを伝えなければ伝わらいない。
新しい町をつくる時もそうだ。その土地の持つ記憶を確りと継承していく必要があるからである。
弊社で手掛けさせていただいているリプチの森もそうである。“摂田屋ものがたり”(2006年発刊)に確りと書かれているのでそちらを参照にしてほしい。摂田屋の町の持つ空気を確りと移入してほしいのと思う実験でもある。
「風景(水・はさぎ)を取り入れる」:まっすぐな道・まがりくねった道
実際に何もしなければどんどん朽ちていく。
眠っていた建物を残す。立派な「おこし」である。
「まち」は建物と同じ、ほっとけば崩れる・壊れる。
様々のものを育ててきたが町を育てることをしなかった。つくり壊し繰り返し!
良いものも(豊かな記憶)壊してきた。そんなところを良き環境と呼ぶことはできない。

③ 人も教育しないと野蛮になる:すまいも町も育てていかないと朽ちていく。
良いものは残し・メンテナンス加えて、町の個性を大切にしよう。
その為のイベント!記憶に残していく。
リプチの森の町づくり「風景(水・はさぎ)を取り入れる」:まっすぐな道・まがりくねった道
APMの誕生:アートのある街:豊かな街(サフラン酒の鏝絵蔵)

思い出した。それを伝えたい。
それは私が小学校6年の卒業式の時にPTA・同窓会長(長谷川酒造当時社長?長谷川信元法務大臣)が言ったご挨拶である。
君たちには100点取った子もいるし50点の子もいる。確かに100点と50点だけを見ると大きな差があるように見えるが、君たち全員に目には見えないが1万点があるのだから。10100点と10050点の差でしかないのだよ。
今にして思えば潜在能力は評価できる評価表では表せないことを言われたのである。
つまり町おこしと同じように人おこし!が語られていた。
人おこしは町おこし!これからも何もしないで指をくわえてみているのではなくどんどん手を加えて故郷を愛する心を起こしていきたいものである。
・・・・・・・
P.S:10100点と10050点の比較には一つのアイロニーが含まれていた。
満足するな!諦めるな!が共通キーワードとして見え隠れする。決して50点だけの子に100点を目指してエールを送っているのではない。
元々学校での評価の一方式として100点満点評価方式がとられているにしか過ぎず。これからは100点に満足せずに君の能力を倍にすれば200点だ。50点の子も諦めないで能力を倍にすれば100点になる。最初の50点の差が100点までの差が出来ることになる。
どんな点数の子も目標は限りなく高く! である。

ま ち=間知
ま ち=集まる:Assemble 組み立て!

・家々が集まる:集落になる!まちが生まれる!
・ 景観をつくる。=個性ある空間
:宿根木・出雲崎・村上・摂田屋・宮内
・          =時間軸:時代の風景:昔の風景・
・ 風景の中で生活している。豊かさ!
・ 風景の記憶!継続と分断!時代ともに変わる。
・ 新しい葡萄酒は新しい革袋に!温故知新!
・ 10月第一土曜日の「おっここ市」「米100俵まつり」
・灯り祭り!
・ 6月22日夏至:APMにてキャンドルナイト

 

   朝の散歩道にきれいに咲いた紫陽花!そのすぐ隣にはほったらかしの小屋がある。小屋は日ごとに朽ちていく。  お話を聞きながらメモする子・意見を言う子・スライドにくいいる子:熱心だ!
   こだま美術館には児童の作品が掲げられている。こだまはし美術館にも多くの作品が所狭しと掲示されていた。