高田清太郎ブログ

「100年の風」は「木」の上で舞った「鉄」



エッセイ

「100年の風」は「木」の上で舞った「鉄」
本年度:2011年度の日本建築学会の大会は8月23日~25日の三日間で開催された。
大隈記念講堂での開会式を皮切りに早稲田大学早稲田キャンパスを所狭しと学術講演会・建築デザイン発表会・研究協議会・研究懇談会・パネルディスカッションが開催された。
発表作品は8000アイテムにも及ぶと言うから気が遠くなる話でもある。
私たちの参加したジャンルは建築デザイン部門である。この部門は13のセクションから成り立っていた。
① 協働の建築・まちづくり
② 建築VSものづくり
③ 空間と環境の統合デザイン
④ 建築の再生あるいは再利用のための改修(民家・まち・リフォーム・コンバージョン・デザインの保全と耐震改修)
⑤ 空間概念
⑥ 構造デザイン
⑦ 病院・福祉
⑧ オフィス・工場
⑨ 教育
⑩ 都市再生
⑪ 公共空間
⑫ コミュニティー空間
⑬ 住宅
以上の13セクションである。
そして私たちが発表した“「百年の風」をデザインする:ステンレスによるテンセグリック・タワーの制作と施工”は②の「建築VSものづくり」のセクションであった。
このセクションでは全20作品が発表された。
「100年の風」は2010年に新潟県立長岡商業高等学校の100周年を記念しての記念モニュメントの依頼が同校同窓生である秋山孝多摩美術大学教授に来たことから始まったプロジェクトであった。
士魂と商才の大切さを知った長岡産業人たちが必要に迫られて作り上げた長岡商業高校は長岡市立で出発開校した。まさに商業高校は士魂と商才で育まれてきた学校を秋山孝氏は100年の風で表現しようとしたものであった。
特にこの分野はアーキニアリングの造語で表せるようにアーキテクチャーとエンジニアリングをハイブリッドさせたものであり、意匠と構造の分け隔てをなくしているのである。
発表者に与えられた発表時間は4分+質疑3分の合計7分であった。
発表者にとっては、こんにちは・・・さようなら!と言うくらいの瞬間芸でもあった。
発表者は大変エネルギーをかけてつくってきた作品である。20作品の誰もが沢山お話したい。とてもとてもこの時間では伝えることが簡単には出来ない。
13:30~16:19の予定が一時間延びて終了時間は17:30くらいになった。
このセクションの講評者は早稲田大学 理工学術院 特任教授の新谷眞人先生であった。
先生は構造デザイナーとして卓越された方である。この時に出会えたことは私にとってはとても嬉しいことでもあった。
と言うのも7月初旬にお邪魔した「まちとしょテラソ」はとても素晴らしい建築作品であった。この作品は長野県小布施町に建築されており、建築家:古谷誠章先生と構造デザイナー:新谷眞人先生のコラボレーションであったからでもある。
発表が終わるごとに鋭く講評される新谷先生の言葉に発表者は時にしどろもどろの姿も垣間見られて大変いい勉強になった。
「100年の風」のコンセプトに対する切込みも長岡と言う歴史ある土地を良くご存じの上での質問であるから頭が下がる。質疑には秋山先生の快答が返されて、こちらも小気味よかった。そして、構造的な質疑に対しては日本建築学会前会長の斎藤先生がお答えになられた。完璧な返答であった。
発表後は肩の荷を下ろして他者の発表を聞くことが出来た。大変勉強になった。特に滋賀県立大学の陶器浩一教授の取り組んでおられた“みんなでつくる、竹を用いた「しなやかなストラクチャー」”には大変魅せられた。
折しも建築学会に出かける新幹線で長岡造形大学教授の山下先生に出会った。先生は建築資材としての竹に取り組んでいく研究の為に出かける途中だと言う。
竹のことが重なったので尚のこと気になったのかもしれないが。固い構造資材ではなく、しなやかなストラクチャーは今後とも目を離せないものとなっていくことを確信した一人である。
大学の先輩である今川憲英先生のCO2を削減するエコ・ストラクチャデザインも大変興味をそそる発表であった。
釘づけにされた4時間があっという間に過ぎてしまった。
数年前からこの部門では優秀な作品を1~2点選んで表彰することになっていると言うことが会の開催時に発表されていた。それ故に最後まで残る様に!と言う促しでもあった。
20セクションの発表が終わって招待講評者であられる新谷眞人先生から、講評があった。そして、優秀作品の発表であった。なんと、「100年の風」が最初に選ばれた。もう一点は日建設計の原田さんが発表された、「機能美と構造美を追求した台形柱梁ラーメン架構の設計」であった。
“100年の風”は正に檜舞台で舞った風になったのである。ヒノキの「木」の上でステンレスの「鉄」が舞ったのであるから。
多くの皆様の御協力で陽の目を見たことになる。ありがたい・感動の建築学会であった。

様々な舞台・ステージがある。檜舞台はまさに その舞台。日本建築学会の舞台にテンスグリックタワーが踊った。

*以下は発表された原稿を転写!

     発表会場は早稲田大学15号館02教室  質問に答える秋山・斎藤両先生  秋山先生と原田さん(日建設計)が受賞
   どーです。やりましたよ!皆様のおかげです。ありがとうございます。
                     清之介君(右)にとっては久々の母校早大:大隈記念講堂前で!                付録で私もおめでとう!