高田清太郎ブログ

上棟式はまさに建築主様ご家族の晴れ舞台である。



建築/巣舞.間知.趣舞

* 私はこのブログを使って何度も上棟式のことについて触れてきたが、今日あらためてこのことについて書かせてもらうことにした。
・ 7月は9軒の上棟があった。一週間に二軒とうまく分かれておれば良いのだが、どう言う訳か大体重なることが多い。一番の原因は六曜で日柄を選ぶことと大きく関係しているからである。
・ 六曜とはウィキペディアによれば「暦注の一つで、先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口の6種を言う。日本では、暦の中でも有名な暦注の一つで、一般のカレンダーや手帳にも記載されていることが多い。今日の日本においても影響力があり、“結婚式は大安がよい”“葬式は友引を避ける”など、主に冠婚葬祭などの儀式と結びついて使用されていた。」とある。
・ そのような理由で晴れの舞台である上棟式も大安と友引が一番好まれるようである。よって重なるのである。
・ 私にとっては毎日が大安・友引であって欲しいのであるが暦はそうはさせてくれない。* 新潟県は雪解けを待って4月に一番の上棟ラッシュになる。春の槌音はこの地方の風物詩でもある。弊社でも月に10棟~15棟の上棟になっても不思議ではない。換算すると一週間に平均3~4棟ずつ上棟して行くことになる。
・ 平潤化できればありがたいのであるが前述の様でそうは簡単ではない。一週間に5軒の建前があるとプレカット(現場で構造材を組み立てていくために前もって機械で仕口加工をしておく)資材配送から現場段取りにはとても気を使うことになる。出荷のチェックは入念に行われる。
・ 新潟県は雪国である。冬工事が極端に少なくなる地方性を享受しなければならないからである。
・ しかし、一気にストックされた資材が出荷され倉庫に空間が出来る:私はこの時に何とも言えない気持ちの良さを覚えるのである。
・ スケッチから始まった巣舞づくりがキャド図面として起こされ、意匠図の検討が加えられ構造計算を経ながら構造図の作成へとつながる。やがて、プレカットキャドオペレーターを通って加工である。
・ プレカットキャドの段階でもエラーチェックをしながら入念に入力されていく。それでも斜め材やアール材が入るとプレカット機械では加工しない。それらはすべて手加工になるのである。
・ 手加工の部分のチェックが大事である。
・ 新築・増改築含めて年間100棟前後の仕事のお手伝いをさせて頂いているが、弊社みたいな小さな規模の会社がプレカットを持っているのも全国的に見ても珍しいようである。
・ そもそも、25年前に導入しようとしていたのは当社の工場内での手加工場の限度があったからであった。そこでプレカット加工の外注を考えたのであるが、当時のプレカット工場はまだまだ多くなく当社の図面を簡単に引き受けてくれなかったのである。それは規格型でなく手加工部分が沢山出るからである。個性ある巣舞づくりのためには当然と言えば当然のことであったが。
・ そもそも平面図はその方の巣舞づくりの原点であるから、個性的にならざるを得ない。その個性的な図面が一般加工しかしないプレカット機械には拒絶されてしまったからである。
・ それならば!と言うことで自社導入が検討された。導入することで解決するのではないかととても単純な発想からであった。お蔭様で当時は年間にして現在の1/3から1/2の仕事しかできなかったのであるが機械導入で2~3倍になったのである。
・ 設計事務所がプレカット工場を持つのは?と一般的には考えられにくいところでもある。
・ 同じように設計事務所が巣舞づくりの他に間知づくりなどデベロッパーまがいのことをすること自体も摩訶不思議な視線を覚えたものであるが。
・ 私自身は「居場所探しの旅をしている人々のお手伝い!」が弊社の仕事ドメインに置いたところから出発しているのであるから我が社的にはなんら不思議ではないのである。むしろ当たり前のことであるが。
・ 建築会社にもさまざまである。全部外注と言う会社は結構多い。しかし、弊社はソフト半分・ハード半分と言う長い間につくられた会社の風土を継承しているからである。

* 一軒の住宅が完成するまでには沢山の人々の職人の手を借りなければならない。
・ そこで夫々の特技の職人が図面を基に監督指揮下で磨いた腕の発揮をするのである。
・ 建築途上には節目々々に様々な場面がある。その最大なる一つが上棟式である。
・ プレカットされた資材を組み立てていく。一般的には2日間位掛かるが、坪数が大きくなると3日~5日もかかることがある。
・ 上棟工程は確りと守られなければならない。その為にも間違いがあってはならない。上棟日に上棟が出来なかったら建築屋としても不名誉なことである。
・ さて上棟日には、親戚・近所に人々が集まってくる。餅まきの儀式が行われるからである。
・ 上棟した屋根は上って餅まく施主様の晴れ舞台である。
・ 餅まくときには出来るだけ天気が晴れていることを祈る。屋根の上では祝詞があげられ、お神酒の真似事をして祝うのである。その後で記念写真を撮る。
・ そして餅まきである。まず四隅に置かれた隅餅を4個全員手分けしてまくのである。
・ この隅餅は切り餅とは違って比較的大きな餅と言うことになる。下で拾った人はラッキーである。その方は次に自分も家の建築を考える人になるのである?結婚式の時に花嫁が投げるブーケを受け取った人が次の花嫁になるチャンスがやってくるように。
・ 餅まきと言いながらも現在では様々なお菓子が同時にまかれる。カップラーメンがまかれると餅の存在感が薄れそうである。いやむしろ餅の貴重さを再確認することになる。ご縁がある様にと5円玉や50円玉がまかれる。
・ それらの儀式が終わると、施主様から一列に並んだ職人さん達に御礼としてご祝儀と折箱が手渡される。
・ その後当社の棟梁から上棟のお祝い言葉とご祝儀に対する御礼が述べられる。一生懸命に力を尽くして完成するまで頑張りますと一言添えるのである。
・ そして、今度は施主様からご挨拶がなされる。
・ 先週の上棟現場の一つであるK様邸の上棟儀式の時にK様からご挨拶を頂いた。とてもありがたいお言葉だったので書かせて頂くと。
・ 何で高田建築事務所を選んだか?仕事柄公職の立場上からは沢山の建築業者さんがおいでである。業者選択はそう簡単ではないことである。
・ しかし、“中越地震の時に高田建築事務所さんの建物が大変強かったと言ううわさが出ていた。以前から付き合いをさせて頂いた高田社長と会う機会があったので聞いてみたら、その時の言葉が「当社は手抜きと言う特殊技術を持っていない会社なのです。」と言われた。”
・ “そして、ある会で息子さんに会ったらとても息子さんとも気が合いおやじさんではなく、息子さんを担当に選ばせて頂きました。”と今日までの経緯をお話して下さった。
・ 私にとってはこれ以上ないご挨拶を頂いたのであった。とても嬉しい限りであった。
・ 上棟日が近づいた、その日にさかのぼるとある日にこんなことを言われたと告白された。「何で公職にあられるKさんは高田建築事務所を選んだのか?」と聞かれることがあるので、その時には「高田建築事務所は私が公職人だからと言って釘一本多くは打たない会社である」と答えています。
・ 事実である。一瞬、複雑な心境になったが、考えるに公人であるK様からの言葉である。とても名誉なことだと思えるのである。
・ 大変うれしいお言葉を頂いた。建築主様にとっての晴れ舞台は建築屋にとっても晴れ舞台である。建築屋冥利に尽きるシーンをジーンとかみしめさせて頂いた。