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「めぶく。」前橋で感じた 建築とまちづくり



日々のこと
建築/巣舞.間知.趣舞

先日、群馬県前橋市へ“建築とまちづくり”の学びの旅へ行ってきました。
前橋といえば、県庁所在地でありながら少し控えめなイメージを持たれることもあるかもしれません。
でも、そんな前橋で今、建築やアート、おしゃれな外観や内装でのリノベーションを軸にした、空間とまちづくりが静かに進行しているのをご存知でしょうか?

実際に訪れてみると、建物の一つひとつに物語があり、それぞれがまちと関係性を築いていました。
そして、そこに関わる人々の存在もまた、「建築がまちを変える力」を支えているようでした。


■アーツ前橋 ─ “閉じた美術館”から“開かれたまちの広場”へ

旅のスタートは、前橋市の中心部にある現代アート美術館「アーツ前橋」から。
この建物、もともとは1980年代に建てられた百貨店のビルだったそうです。
それを大胆にリノベーションし、2013年に美術館として再生されました。
アーツ前橋外観 アーツ前橋

外壁は、アルミ製の特注パンチングメタルパネルで構成されており、下部から上部にかけて孔のサイズが段階的に小さく変化しています。このデザインにより、上昇感が演出され、昼夜を問わず美しい表情を見せます。

中に入ってまず驚いたのは、その「開かれ方」です。エントランスはガラス張りで、通りから美術館内部の様子がよく見える。カフェやショップも併設されており、美術館に入るというよりは「まちの一部に自然と足を踏み入れる」ような感覚。ここではアートが「見るもの」から「関わるもの」へと変化しており、それが美術館とまちの距離をぐっと縮めているように思えました。

 

■白井屋ホテル──建築が記憶と未来をつなぐ

次に訪れたのは、今の前橋を語る上で欠かせない存在「白井屋ホテル」。
ここは、明治時代から続いた老舗旅館をベースに、藤本壮介氏の建築デザインと世界的アーティストたちの力を借りてリノベーションされた、まちの象徴的なプロジェクトです。
藤本壮介氏といえば、現在開催中の大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」を設計したことでも有名ですね。
白井屋外観

圧倒的な存在感の外構とアプローチが目を引きます。
「丘のような外観」「自然素材の使用」「高低差をつなぐスロープと階段」
無機質なコンクリートと豊かな植物たちが見事に融合したアプローチで、自然に建物へと導かれます。

 

■まえばしガレリア──複合施設から文化拠点へ

そして今回の旅の中の一番の目的であるのが、「まえばしガレリア」でした。
まえばしガレリア外観

建築家の平田晃久氏が設計を担当したこの施設は、1階にギャラリーやカフェ、2~4階に分譲住宅が入ったアートと生活が融合した複合施設です。

「一本の樹の下に人々が集まるように、人々の自由な活動で満ちた場所をつくりたい」という想いでつくられた建物は、そのイメージを形にした緑化された外壁と開放的な中庭空間でおおらかに構成されていました。中庭から緑化した外壁越しに見る空は、高く透き通った空でした。

平田晃久氏は以前のブログでもご紹介した、小千谷市の複合施設「ホントカ。」を設計した方です。
違った目線で建築された複合施設ですが、双方ともまちに大きな影響を与えていました。(ブログ紹介記事はこちら

 


 

前橋というまちを思い返すと、そこには共通したキーワードがいくつか浮かんできます。

前橋の風景 前橋の風景

「空間が人を動かす」「建築がまちの記憶を継承する」「デザインが日常を変える」
リノベーションは再生であると同時に、未来への投資です。

大都市ではないからこそ、建物の一つひとつ、人と場所の関係性のひとつひとつに目を向けるまちづくりが実現しているのだと感じました。

公共空間、宿泊施設、美術館、商業ビル。それぞれの場が、役割を超えて「まちの記憶」と「人の営み」をつなげていく姿は、まちづくりを考える上で非常に学びの多いものでした。

建築は、ただ人が集まる“器”ではなく、まちの記憶を引き継ぎ、人と人との関係を生み出し、時にはまちの未来を指し示すような存在でした。
前橋市で体験したのは、そんな「建築がまちと共に生きている」姿でした。
前橋の風景 前橋の風景

印象的だったのは、前橋市がまちづくりのビジョンとして掲げている「めぶく。」というキャッチコピー。
このまちが醸し出している空気感にぴったりだと感じました。

「めぶく。」それは、新しい芽が生まれ、育ち、広がっていくイメージ。
前橋市では今、まちのあちこちで、その“芽吹き”が起きています。
それは大きなプロジェクトだけではなく、小さなリノベーションや1軒の店、1人の起業家の活動にも表れていて、まち全体が静かに、でも確実に「動いている」ことを感じました。

「まち」は、誰かが完成させるものではなく、そこにいる一人ひとりが関わることで育っていくもの。
このまちの未来をつくるのは、市民であり、来訪者であり、これから関わる “あなた”かもしれません。

建築やまちづくりが好きな方はもちろん、自分の暮らしや働き方を見つめ直したい方にとっても、前橋は静かに寄り添ってくれる場所です。
ぜひ一度、自分の足で歩いて、空気を感じてみてください。
きっと、あなたの中にも何かが「めぶく」瞬間が訪れるはずです。

長岡本社 フォレス・タカダ 風間

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