高田清太郎ブログ

NO.51 「空間をつなぐ吹き抜け」・・・・一見ムダに真の豊かさ



エッセイ

家の長さ全体にとった吹き抜け空間は水平建具で自由自在(左)。

上部が開く開花型建具を持ったピラミッド吹き抜けの上部(右上)、開花した状態(同中)、閉じた状態(同下)

 

 

吹き抜け空間の歴史は長く、時代とともにさまざまに姿を変えてきています。視覚的には上下階をつなぎ圧迫感を振り払う大切な装置です。開放的であり、楽しい居場所空間でもあります。
一方、吹き抜けに反対する人もおいでのことも事実です。理由は①熱効率の悪さ②上下階の音の問題③実用面積が少なくなる―など。確かに、暖かい空気は吹 き抜けを通して二階に上がり、一階は冷え冷えすることもあります。対策としては、サーキュレーターを設置したり、床暖房を採用すれば、むしろ「吹き抜け空 間」は二階にも暖を送ってくれる良いシステムと言ってよいでしょう。
コタツの嫌いなK.Oさんの場合は、暖房に暖炉(まきストーブ)を採用しました。暖炉の暖かい空気を家中に回すため六間(約11m)の長い吹き抜けを設 け、水平の可動仕切り(障子)で暖気の調整をすることにしたのです。障子越しの光はやさしく、部屋の表情を和らげるインテリアとしても役だってくれます。

K.Aさんの場合は、三角の形をした四枚の建具で四角錘を造り、縦型に開閉できるようにしてみました。玄関ホールから見るとピラミッド形の光天井モニュメントにもなって空間に華を添えてくれています。
このように開閉自由な建具で、気温の変化が激しい新潟の夏と冬の温熱環境の切り替えにも一役買うことになります。これからのエネルギー問題を考える上でも大切な仕掛けづくりです。
音の問題ですが、見方を変えれば現代は家族のふれあいが大切だとされる時代。気配を感じる家造り、スキンシップの家造りを目指す人たちにとってはむしろ「吹き抜け」はお互いを感じる大切なツールでもあります。
さらに「狭いのに、吹き抜けなどもってのほか!」と言われる方も、吹き抜けを目と耳と肌(視覚、聴覚、感覚)の癒しの空間と考えたらいかがでしょう。多少の床面積を捨ててでも吹き抜け空間をとる価値は大いにあると思いませんか。
吹き抜けは英訳するとVOID(ボイド)。意味は“空き”とか“空間”。吹き抜けのような、何もない一見ムダだと思われる空間こそ、本来の空間づくりに求められる真の豊かさがあるのかもしれません。「損して得とれ」とは良く言ったものです。