ブログ

雪えくぼ

2010.02.9

ヒントは屋根の構造に新風を吹き込んだ。
昨年末の24cm積雪に引き続き、新潟市内は81cmと言う積雪を記録した。26年ぶりとか言っていた。雪国には雪が降らなければ見ることができない風景が沢山ある。
その一つに「雪えくぼ」がある。えくぼの素敵な人はとてもチャーミングに感じる。真平な雪原よりも波打っている表情はとても楽しい。田圃に残った水が芸術的に雪を彫刻して行く。
今日は少々真面目な話しである。(私自身はいつもそうだと思っていたが違うと言う人もいたので念のために再確認)雪が融ける姿を見ていると木々の根っこ周りから融けたり、屋根雪もアングルのあるところから消え始める風景は何も目新しいことではない。この風景を”雪えくぼ“と呼んでいる。
目新しくも無いので特段気にも留めない。ところが気に留める人がいる。リンゴが落ちるのを観て重力を発見したニュートンみたいに、雪えくぼを見ていて屋根雪の消雪方法を考え出したのであるから尋常ではない。
“雪えくぼ”が屋根雪を融かすシステムを生み出した。生みの親は新潟工科大学建築学科の深沢大輔教授である。遡ること今から14・5年前の話しである。深沢先生は建築学科の先生であり、建築学会はもとより雪工学会・雪氷学会でも当時から大変ご活躍であった。雪国の建築・特に屋根雪処理の問題・地震に耐ええる建築になると情熱を持ったお話は、終わる時計をもたれない。流暢な話は内容も濃く一気に襲う情報流量は私の頭脳では直ぐに溢れてしまう。
建築家はご自邸の設計の時にこそ本領発揮である。普段出来ないことをやってしまうのである。必然的に実験的なものになることは避けられない。上手く行って当たり前。出来なければ被害者は家族と決まっている。家族だから我慢してもらえるから実験住宅となる。
そんな先生のご自宅を建てるお手伝いをさせていただいた時の話しである。建設地は雪深い長岡市栃尾地区である。それまでも何度も家の増改築を繰り返されていた。井戸水で融雪する屋根・自然落雪タイプの屋根・無落雪屋根が敷地内に並んでいる。今度は何と雪えくぼ屋根雪融雪工法だというのである。
そもそも、雪えくぼとは雪原にできるえくぼ(“ほくろ”でなく“えくぼ”)である。雪えくぼは、雪消え時に木々の根元から最初に消え始める現象である。グランドにある雪が、鉄棒のある部分から先に融けた風景は、余りにも一般的過ぎて気にも留めないことかもしれないが。どうしてそこから消え始めるのかは定かでないらしいが、地熱の伝達か特殊な赤外線のいたずらか?何れにせよ現象は事実である。その原理を利用しようと頑張られ見事に自宅を完成された先生である。
その件を私なりに新潟日報でエッセイとして紹介させたいただいたときのものを転載することにする。

  
庭先の雪えくぼ 典型的な雪えくぼ とてもチャーミングな雪えくぼ
  
雪止めアングルの位置から融け始める 雪ニキビえくぼと雪崩えくぼ 土手 流れ雪えくぼ

NO.21 「雪国の風景④」・・・・屋根に”雪えくぼ”再現(新潟日報2001年掲載)

今回は融雪式についてお話しさせていただきます。屋根の上に雪を載せたままで消そうという手法です。当然のことながら雪を消すために雪一グラム当たり八十カロリーの熱エネルギーが必要です。
初期に登場したのは約14度の地下水を利用しての消雪です。ポンプアップして屋根の棟の部分から放水するのです。井戸堀りのための初期コストはかかりますが、ランニングコストは比較的かかりません。環境に優しい方法ですが、地盤沈下との兼ね合いには慎重を期します。そのほかに温水パネルを屋根下地に設置し循環させる方法などさまざまですが、その熱源(電気・ガス・灯油)を何にするかで費用や効果に差が出てきますので、検討の時には十分注意も必要です。

さて、自然エネルギーを利用した融雪屋根『雪えくぼ』についてご紹介します。開発されたのは新潟工科大学の深沢大輔教授です。栃尾市の自宅を実験棟として建築されるときにお手伝いさせていただいた関係から、とても気になる工法の一つです。春先に木の根の周りから雪が消え、グランドでは鉄棒の周りから先に雪が消える”雪えくぼ”現象(雪原がえくぼのようにへこむことからそのように呼ばれる)をヒントに実験を重ねられ、それを再現しようとしたものです。
融雪式は一般的に雪の屋根底面から考えますが、屋根雪の表面からの融雪は厳冬期においても意外とあるものです。そこで屋根に一辺が150cmの四角錐のピラミッド60個を載せ、表面積を多くして融雪するシステムが自然融雪式載雪型屋根です。ポイントは溶けた水がピラミッドの四面をいかに素早く流れるかにかかってきます。また、ピラミッドの頂点を鉄管で連結し、雪が150cmを越えて鉄管が埋もれたときから「雪えくぼ」の原理が働きはじめます。
これは地下水や化石エネルギーにたよらない自然の原理、エネルギーを利用した穏やかな方法です。ファンタスチックな外観、SF小説に出てきそうな屋根。空から舞い降りてくる雪に語りかける姿はとてもロマンチックでもあります。
人間はお金や技術を持つと何でもできると勘違いし、自分の思い通りに相手を変えることを優先しますが、雪に親しもうとするならば相手を大切にして、自分を変える努力も必要です。雪を地域の欠点とし、克服しようという意識から、雪に親しむ「和雪」、雪を利用する「利雪」という意識を持つことが、今後の屋根雪処理にかかせない、重要なポイントとなるでしょう。

この記事をシェアする