高田清太郎ブログ

NO.8 「品確法」・・・・ユーザー優先の視点に



エッセイ

東京で世界の四大文明展が開催されています。世界最古の文明メソポタミア文明の「目には目を、歯には歯を」でお馴染みのハンムラビ(紀元前1800)の 作った法典に、「もし大工が人のために家を建てたが、彼の仕事を慎重に行わず壁が曲がったなら、その大工は自費でその壁を強化しなければならない」という くだりがあります。2000年4月の契約より、住宅建築業界において品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)が施行されました①基本構造部分と雨水 浸入防止の10年保証②住宅性能表示制度③住宅専門の紛争処理機関設置の三本柱から成り立ってます。今まで住宅建築上の問題処理は、まず建築主が「瑕疵 (かし)があった場合には、その原因の立証」をしなければならなかったために大変な時間と労力が費やされました。しかしこの法律は事実が確認できた時点 で、瑕疵保証の対象になるというものです。対象は主に新築住宅の基本構造部分(基礎・柱・床・屋根等)に限られます。例えば、保証の対象は柱や床の傾斜に おいては、3/1000の傾きを持って長期保証の技術的基準にしようというものです。
しかし、ここにはちょっとした落とし穴があります。3/1000の傾きとは一体どんな傾きなのでしょうか。例えば、八畳の部屋を想定してみてください。一 辺の長さが3.64メートルですから、約1.1センチメートルの傾きを許可したことになります。この数値は精度面からは再検討を要求されますが、住宅業界 全般の底上げになったのは間違いないことです。
今まで各社各様の基準で、建築後の補修メンテナンスが行われてきました。曲がった柱で建てられたり、基礎の水平が確保されなかったことがあります。一部デ ベロッパーによるずさんな工事が、マスコミに紹介され、建築主に不安を与えました。某大学教授がテレビで実験、床を転がるボールの例を示し、手抜き工事に 気を付けるようにアピールしました。当社のお客さまからも「うちは大丈夫かしら?」の問い合わせがきました。
戦後一貫して生産者を保護してきた法律視点から、消費者・ユーザー優先の視点に変わってきたことの表れでもあります。自動車や家電製品ではかなり以前から当たり前の法律であり、ようやく住宅分野にも押し寄せてきた波と言ってよいでしょう。
いずれにしても、新しく作られた品確法が、最も古き法典の中に盛られていたのです。建築業界全体のモラルが問われているといってよいでしょう。