高田清太郎ブログ

NO.21 「雪国の風景④」・・・・屋根に”雪えくぼ”再現



エッセイ

今回は融雪式についてお話しさせていただきます。屋根の上に雪を載せたままで消そうという手法です。当然のことながら雪を消すために雪一グラム当たり八十カロリーの熱エネルギーが必要です。
初期に登場したのは約14度の地下水を利用しての消雪です。ポンプアップして屋根の棟の部分から放水するのです。井戸堀りのための初期コストはかかります が、ランニングコストは比較的かかりません。環境に優しい方法ですが、地盤沈下との兼ね合いには慎重を期します。そのほかに温水パネルを屋根下地に設置し 循環させる方法などさまざまですが、その熱源(電気・ガス・灯油)を何にするかで費用や効果に差が出てきますので、検討の時には十分注意も必要です。

さて、自然エネルギーを利用した融雪屋根『雪えくぼ』についてご紹介します。開発されたのは新潟工科大学の深沢大輔教授です。栃尾市の自宅を実験棟 として建築されるときにお手伝いさせていただいた関係から、とても気になる工法の一つです。春先に木の根の周りから雪が消え、グランドでは鉄棒の周りから 先に雪が消える”雪えくぼ”現象(雪原がえくぼのようにへこむことからそのように呼ばれる)をヒントに実験を重ねられ、それを再現しようとしたものです。
融雪式は一般的に雪の屋根底面から考えますが、屋根雪の表面からの融雪は厳冬期においても意外とあるものです。そこで屋根に一辺が150cmの四角錐のピ ラミッド60個を載せ、表面積を多くして融雪するシステムが自然融雪式載雪型屋根です。ポイントは溶けた水がピラミッドの四面をいかに素早く流れるかにか かってきます。また、ピラミッドの頂点を鉄管で連結し、雪が150cmを越えて鉄管が埋もれたときから「雪えくぼ」の原理が働きはじめます。
これは地下水や化石エネルギーにたよらない自然の原理、エネルギーを利用した穏やかな方法です。ファンタスチックな外観、SF小説に出てきそうな屋根。空から舞い降りてくる雪に語りかける姿はとてもロマンチックでもあります。
人間はお金や技術を持つと何でもできると勘違いし、自分の思い通りに相手を変えることを優先しますが、雪に親しもうとするならば相手を大切にして、自分を 変える努力も必要です。雪を地域の欠点とし、克服しようという意識から、雪に親しむ「和雪」、雪を利用する「利雪」という意識を持つことが、今後の屋根雪 処理にかかせない、重要なポイントとなるでしょう。