高田清太郎ブログ

NO.25 「ホスピデンス」・・・・屋内に街並みを造った



エッセイ

冬は外部が閉ざされ、雪国の人々は家の中に閉じこもりがちです。冬に限らずともこれに似た環境を私たちは至る所に見ることができるのです。例えば、閉じ込 められる空間の一つに病院や介護福祉施設があります。閉鎖的な内部空間に収容されるわけですから精神的にも圧迫感を免れません。長期療養型の施設の場合は 滞在時間が長いので、特に空間が患者に及ぼす影響力は大きなものと考えてよいでしょう。
欧米では、ドクターと建築家の共同作業で病院建築を考えるということが、歴史の中で長く根づいていると聞いております。最もリラックスできる状況を助長す るような空間をつくることが即治療活動の一部でもあると考えられています。最もリラックスできる空間とは一体なにか。その一つは日常性、日常生活空間と考 えてよいかもしれません。圧迫されるような四角な壁と天井で閉じ込められる空間ではなく、明るく、天井高く、楽しい開放的な空間が求められています。
5年前、長岡市深沢の田宮病院(精神科第8病棟)の設計担当をさせていただいたとき、①街並みを室内に造ろう②わが家に居るような感覚・精神的に開放感を 生む空間③天井は高く、四角い空間からの回避―というコンセプトを明確に出発いたしました。精神医療施設としての機能を満たし、さらに長期入院患者のため に宿泊施設としてのアメニティ(快適さ)の高さと、変化に富んだ空間構成をとることにより、日常生活空間にできるだけ近づけ、快適な入院生活を送れるよう にすることが目標でもありました。外観は、深沢地域の自然環境に恵まれている敷地に大きな家族を包み込むようなデザインが採用され、内部は多世帯が住む小 さな街づくりの空間を想定し、家の中に外の空間を取り入れることにしたのです。廊下は道であり、おのおのの病室を各戸の住宅にみたて、家々には屋根がかか り、所々の小屋裏から光りが漏れてきます。道の両わきには街路樹(RCの丸柱)がチドリに配され、空に向かって大きな葉(梁=はり)を広げております。 トップライトからの光はちょうど木洩れ日のようでもあります。
食堂デールームに大空をかけわたし、天の川がちりばめられています。全体では、大きな家族のすまいを考えながら、個々室を大切にした空間づくりへの提案です。
第八病棟は、別名「ホスピデンス棟」。病院(ホスピタル)でありながら、わが家の居室(レジデンス)感を出すように計画されました。ハイブリット新単語です。