高田清太郎ブログ

NO.27 「老人の居場所②」・・・・土地の特徴 大胆に採用



エッセイ

前回に引き続いて西蒲分水町の老健施設「ぶんすい」の設計プロセスを、ハード的側面からお話しさせていただきたいと思います。
施設は百床のベッド数と二十人対応の通所リハビリ施設を併設しています。第一義的機能として多数が同居する、つまり一つの大きな家に住むということでも あります。しかし、施設内の一人ひとりにはさまざまな個人差があり、決してひとまとめにはできないことも当然のことです。これらの事情を即外観に反映でき ないかと考え、外壁の外にもう一枚の壁を作り、小分けにし、ちょうど町内の班編成のようなグルーピング化をすることにしました。
施設機能に加えてデザインボキャブラリ―のもう一つに「その土地の風景」があリます。そこで「その土地の風景」があります。「分水堰(せき)」は越後平 野の最大の治水事業です。そこで堰のモチーフをふんだんに取り入れ、特に外観にはデフォルメした「水門」をちりばめました。また、分水桜まつりで有名な桜 並木や「おいらん道中」も取り入れました。一階の作業訓練室兼ホールには、丸柱を桜の木に見たてて、だ円形の照明器具である枝は、天井まで伸びています。 天井面にちりばめられた華やかな照明はまさに桜の花。おいらんの外八文字歩きにあやかって、だ円形の照明器具はニ秒と言う時間差で八文字を描く様に次々と 点灯し、二十秒後にはエレベーターの入り口まで到達します。
施設自体が大きな共同体、一つの森であり、山でもあるのですから、エレベーターは単なる昇降機ではなく、二階・三階の療養室へのゲートでもあります。メル ヘンチックに「ととろバス」で出発という物語を想定し、光と時間を組み合わせたデザインにしてみました。物語は屋上まで続き、屋上の飾り物の中に六想人 (喜怒哀楽人)と、佐渡へなびく草木のモチーフを掲げて、お年寄りたちの生きてきた人生の流れを象徴化してみました。メルヘンは森の守り主・ふくろうを将 来、増築はりにとめることでさらに広がっていきます。人生も建築もその土地の歴史と風景からは切り離せないことを示唆してくれているのです。
2015年には四人に一人が高齢者という超高齢社会の到来が予測されています。活力ある長寿社会にしていくためには、さまざまな角度からお年寄りの居場 所を考えていく必要があります。ハード・ソフト両面にいえることですが、それぞれの施設には「個性と特徴そしてアイデア」が要求されてくることでしょう。