高田清太郎ブログ

NO.29 「子供の居場所 2」・・・・園舎は大きな家族空間



エッセイ

都市空間や建築空間が人間社会に与える影響力は大変大きいものがあります。子供の居場所の一つである幼稚園舎や保育園舎は子供たちが社会生活に初めて一人でデビュ―する空間であり、共同教育を受ける最初のゲートだけに余計に意味深長です。
15年以上前にお手伝いさせていただいた、宮内中央保育園(長岡市)の改築工事においては、まず家庭生活が即幼稚園の延長になるように計画させていただ きました。園舎は大きな家族空間。家庭生活では寝食の場所を別々にしているに、保育園は各保育室が寝食から製作・遊戯行為に至るすべてを行う場となってい ることがあります。
そこで最初に、寝食を分けるために大きな食堂を作ることにしました。食堂空間を取ったことにより年少から年長まで皆で一緒に楽しく食事をしようというも のです。家庭で兄弟姉妹が一緒に食事をすることをごく自然の姿としてとらえようとしたからです。また、食事の遅速を年長者がカバーしてくれることから上下 関係や思いやりが、しっかりと育成されることを願ったものでもあります。
二つ目のコンセプトは、園児達から発散されるものすごいエネルギーを受け止める空間でなければならないということでした。時に動物の本能のままに走り動き 回る幼児たちの居場所はいったいどこか。すごいエネルギーが育て上げられている幼稚園舎でなければならない。そのエネルギーを受け止めるために平面的には デコボコさせ、さまざまのコーナーを設け、断面的には段々(スキップ)を作ることで動き回る運動エネルギーを吸収させようとも試みました。
そして三つ目のコンセプトは、子供たちが狭いところや隠れる部分が好きである事を素直に受け止めて視覚遮断のアルコーブ(室内や廊下の引っ込んだ一角)を たくさん作ることで対応してみました。保育園全体がまさに子供たちの隠れ家的な居場所でもあるのでしょう。隠れる居場所経験は穏やかな心を作るのでしょう か。隠と穏は兄弟のような字です。
今、教育問題は社会の大問題。建築の空間が人間形成に及ぼす影響は計り知れないものがあります。プランニングは教育方針そのものが表現される設計図なのです。