高田清太郎ブログ

NO.36 「個室の是非①」・・・・コーナーを工夫し活用



エッセイ

長年の念願がかなって私は誕生したのです。御主人の熱い想いが、幾多の困難を乗り越えて誕生させてくれたのです。誕生当初は、帰って来るとご主人は決まって私の部屋に来てくれました。そして、仕事をしたり、小説を読んだりして結構楽しんでもおりました。
建築計画時に面積的制約がありましたが、ご主人の頑張りで六畳も頂いたのです。ところが一年たったころからご主人の足も遠のきはじめ、昨今は冠婚葬祭の引き出物や、土産物が置いていかれ、妙に狭く部屋が息苦しくなってきたのです。

一週間ほど前でしょうか。私の名前が改名されたのです。『書斎』から『収納室』と!ショックでした。ただでさえ狭い家の中で六畳の大きさを取っていただいたのですから感謝すれど、愚痴など言っておられません。本当にご主人の居場所として私は精を出して何かをしてきたか?
「あなたは家に帰って来ても決して書斎で本なんか読まないでしょう。食堂の一角でも良いじゃないの」。まさに、奥様の言われる通り現実はそのようになってしまった…。
こんな書斎のつぶやきが、私の耳にとどきます。書斎コーナーは必要でも書斎個室は慎重に検討、確認してから採用するように!と。そんな反省から生まれた書斎スペースを、いくつか紹介させて頂きます。
Oさんは畳寝室の縁回りを書斎として活用しています。障子で仕切れるので使い勝手は大変良好です。Nさん宅は寝室の中に収納家具で仕切られた書斎。コー ナー出窓で広さと明るさも確保しました。Sさんは、階段の踊り場の延長にニ畳ほどの書斎を設けました。一階からも二階からも近いので便利。欄間部分に障子 をいれて和風の味を演出。茶室のように応接空間としても使える多目的スペースになりました。
このように窓際や壁際のコーナーを障子や収納家具で仕切れば、書斎としての立派な独立空間が演出できます。(寂しがりやのご主人には家族の笑い声の届く範囲がいいかもしれません)
コーナーやアルコーブ(室内の引っ込んだ一角)を生かすことによって、家族空間におけるコミュニケーションもとてもスムーズになってくれることでしょう。