高田清太郎ブログ

NO.41 「内と外の境界③」・・・・物語性のある上がり框



エッセイ

時代のキーワードの一つに”バリアーフリー”があります。優しさと思いやりのシンボルとしての合言葉でもあります。しかし、ほとんどの日本の家屋 は、玄関に入った途端にその言葉を拒絶されてしまいます。履物を脱ぐという生活習慣から生まれる形は、上がり框を必要とするからです。
玄関に仕切りとして設置された上がり框の使命は水を切るという物理的な意味だけではないような気がいたします。「ここからは素足空間ですよ」といったシグ ナルを鳴らしているのでしょう。外と内の空間の仕切りなのです。段差のない框もあるのですが、反対にさらに段差をつけ式台を二段重ねにすると、無言の内に 格式を付けることになります。守るべき室内空間の砦なのでしょうか。「メリハリと仕切り直し」は人生においてもとても大切なことです。
バリアーフリー化が欧米の土足化の推進になるのではないか。と心配するのは私だけでしょうか?いっそのこと考え方を変えて、玄関自体を室内化してみてはい かがでしょうか。たとえば、店舗では多用されているフローリング張りとか、畳を敷きこむとか、ぜひとも住宅においても挑戦してみてもらいたいところです。

上がり框は、玄関に対して直線的に仕切られているものから、斜めに配置するもの、曲線を持つもの、室内まで細長く入り込んだもの(土縁的スタイル)まで、さまざまな仕切り方があります。
例えば音楽家の玄関ホールには、ピアノ型の上がり框で鍵盤をデザインしてみるのもおもしろいです。画家の玄関ホールは、アトリエと居住空間を区画するために設けられた上がり框の一部に透明ガラスを敷き込みギャラリー風に演出してみました
さて、わが家の上がり框は接面を多くするために半島風に突出しています。内海(家人用)と外海(来客用)をバランスよく配置するのが目的でした。住まう方の職業や趣味によってさまざまに物語性のある上がり框が誕生しそうです。
玄関はその家の顔だと先人たちが言った言葉は決して空論ではないのです。内と外の境界ゾーンにはすてきなコンセプトと物語がちりばめられているのです。 簡単に引いた上がり框の線をもう一度考え直してみてください。線ではなく空間としてとらえてみることをお勧めいたします。