高田清太郎ブログ

NO.43 「敷地への配置②」・・・・変形ゆえに楽しい空間



エッセイ

同じ区画の敷地でも道路幅や東西南北どちらの道に接するかで土地の坪単価が変わるのです。敷地に対しても日照条件が問われているからです。
私達は土地選びをするとき、変形敷地を避けて正形の矩形敷地を暗黙の内に選択していることが多々あります。しかし、設計する立場から一言コメントさせてい ただけるなら、むしろ変形ゆえに大変楽しい形の建築ができあがることも否めません。固定概念をちょっと横に置くことでさまざまな可能性が、しかも斬新なア イデアを従えてやってきます。
2年前に計画させていただいたKさんの敷地は正に変形三角形でした。敷地は長岡市内にあり、旧国道17号線と地域幹線道路とに挟まれた、かつて交通の要所と呼ばれたところでもあります。
まず計画は敷地に素直な形で配置することにしました。プランも当然三角形で、二方向に沿った軸は内外部空間にグリッドプランから想像もできない変化に富んだ空間が誕生しましました。
内部は、家の真ん中に光の通り道となる三角形の吹き抜け空間を設けました。またリビング横には三角形の植栽テラスを設け、居住空間の高床感を回避することもできました。
このように室内において必然的に誕生した三角形の空間は、より広く感じたり、引き締まるところはより引き締まったり、空間にメリハリをつけてくれるのです。
外部においては、高床式のアプローチを二方向道路の交差点に配置し、頑丈なコンクリートで舳先の様に作り、車の衝突から守ってくれるようデザイン。さらに この方向がちょうど真北にあたり、サイン性のある鉄板庇をつけることにしました。『羅針盤の家』とネーミングされたK邸は二方向道路にそれぞれの顔を持た せ、異なる雰囲気を作り出すことに成功しました。変形敷地に素直に計画をした故にと言った方がよいかもしれません。
人間はいつも正面的に向き合うことばかりではなく、むしろ斜角度に生活していることを考えると、こちらの方がより自然な形なのでしょう。注意として鋭角の 交点ではなく、できるだけ鈍角の交差空間を作ることは大切です。平行・直行軸だけでなく、軸を自由に使い分ける空間は本当に楽しい空間と言って良いでしょ う。プランニングと同時に敷地をデザインしてみましょう。