高田清太郎ブログ

NO.46 「雁木③」・・・・「伝統」と「変身」の結合



エッセイ

地元の不動産会社によって10年前、見附駅西口に273区画の住宅団地が計画されました。「豊かな街づくりをしたい。本当の豊かさとは、2世帯・3 世帯とつながっていく知恵のリレーの中に存在する。」という考えから、多世帯住宅にも十分対応できるように比較的大きな区画で販売されました。
この団地の入り口にメディカルパーク(医者村)を作りたいというデベロッパーからの設計依頼を頂いたのが今から5年前。急ぐ工程でしたが、最初の段階に全体のしっかりとしたコンセプトをつくることにしました。

コンセプトの一つは、結合した塊にすること。とかくばらばらになりがちな一棟一棟を「つなぐ」イメージを持たせるため、雪国の『雁木装置』を採用しました。
二つ目は、将来に広がっていくイメージを持たせるために、宇宙が造られたときのような渦を中心に据え、まわりに惑星を配置するように各クリニックをおいて みました。渦の中心に欅(けやき)の木を植栽しシンボルとしました。このようにして『サークル雁木』を持つ「ミトロの森プロジェクト」がスタートしたので す。
サークル雁木から各クリニックにアプローチする入り口にエントランスフレームを組んでいます。それぞれをつなぐ雁木は、パーゴラ(日陰棚)風で雨雪をしの ぐというより、フジ棚をつくり人々にいやしの緑を提供してくれています。また屋根を架けたコンクリート造りのベンチ空間は、送迎の待合場であると同時に、 団地のギャラリースペースになってくれたらという願いから造られています。
現在では、整形外科の他に耳鼻咽喉科・眼科が完成、さらに来春以降には皮膚科、内科もオープン予定です。県内でも屈指の地域に溶け込んだ医療サービスゾーンに成長しようとしております。
このように雁木がサークルに変身することにより一層求心力が働いたのです。ライトアップされた雁木や欅(けやき)が「ミトロの森」の夜景ににぎわいを与えてくれています。
今回のサークル雁木は従前に束縛されない「進化した雁木」と言ってよいかもしれません。今後も雁木は「伝統ある形」と「変身する形」が結合されて雪国の新しい風景をつくってくれることでしょう。