高田清太郎ブログ

NO.64 「コートハウス①」・・・・内と外が共生する空間



エッセイ

ベーシックタイプのコートハウス(上)、アプローチにギャラリーを持つコートハウス(中)、ツインコートハウス(下)

 

 

「壁」この言葉からイメージするものは百人百様です。「隔絶する」 「分け隔てる」や「頼りになる」、「守ってくれる」そんな表現かもしれません。壁は実に不思議な力をもっているのです。
現代は情報化時代。情報過多からくる心身のストレスには情報遮断が、とても有効な手立てでもあります。時に完全に隔壁された個空間は、混乱した心身にとって最も優しい居場所になってもくれます。
建物と外構が一体となり中庭空間を誕生させる敷地デザインは、別名「コートハウス」と呼ばれています。囲いの外回りを外海とすれば、中庭は内海に例えられます。町家づくりでは古くからある手法でもあります。
S邸はまさに国構え・ロの字形のプランをしています。コの字形に住居群、開いた部分には車庫を配置。外周壁の開口部を最小限にして光や空気をできるだけ効果的に取り入れ、中庭を解放させ広がりをとるという最も基本的なコートハウススタイルです。

K邸は、南北両面にT字道路が面しています。非常に開放感のある敷地ですが、それは同時に生活するうえでは、守ってくれる壁が必要になります。北 西面にL字形に居住空間を、南東面は雁木風のアプローチがL字形に敷地を囲み、外部に面した側は塀を立ててプライバシーを確保。塀の内側はギャラリーとし ても使えるようになっています。中心に緑あふれる中庭をつくり、内と外とのつながりを楽しむ計画としました。
外壁採光型の現代建築の中にあって、中庭採光型のコートハウスは、周辺の環境に左右されず、自然に親しむ穏やかで変化に富んだ暮らしが実現できます。
計画中のO邸は、ツインのコートハウス。玄関前にとられたコートは車庫と居間に囲まれ、さらに居間から南に開かれたコートは塀で囲われています。2つのコートは、母屋と車庫上に設けられた二世帯住宅の居住空間との程よい距離を作り出してくれてもいます。
コートハウスは都市化する敷地に住まう人々にプライバシー空間を作り出し、内と外が同時共生する空間を提供する手法でもあります。コートハウスは、これからの時代のわが家を守るひとつのスタイルとしての提案です。