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視線以下の風景

2019.10.10

 

 

 

見渡すかぎり広がる空と山々。

県内を移動するとこんな風景によく出会います。

田んぼの表情は四季折々で楽しませてくれ、私自身とても好きな景色のひとつです。

似たように広がる風景に畑がありますが、

隆起ひとつない田園風景は特別なものに感じます。

 

数年前にこの風景がとても素敵なものだと再確認するまでは、

この風景も当たり前のように感じ、意識して見ることはありませんでした。

 

それは県外に行ったときのことです。

車で走っていると、いたるところにぶどう棚があり、

まちの特徴となって素敵な風景をつくっていました。

そこで食べたぶどうも本当においしいことを覚えています。

 

ふと風景について新潟のものと少し違うように気づきました。

もちろん植物の形もそうなのですが、

視線を遮る高さに植物が育っているかどうかでした。

 

遠くまで見通せるかどうかが風景の印象に違いをつくっており、

田園風景は視線より低い稲によってつくられているのだとそのとき意識しました。

 

 

建築でも同じ体験をしたことがあります。

大分県にあるラムネ温泉に行った時のことです。

 

 

藤森照信氏が設計されたこの温泉は軒先をグッと低く抑え、建築群を気持ちよいものにしていました。

全面道路の高さと比べると、建物を地盤から掘りこんで建物全体が低くなっているのが分かります。

 

 

写真ではバラエティーある素材と独自のデザインに見えますが、実際の体感はヒューマンスケールのやさしさと、建築の密度が伝わってきてほっこりした気持ちにさせられます。

一瞬、建築群でありながら低く抑えられた風景に自分が巨人になったかのような気にもなりました。

 

建築に関係する分野は広く、

家具やおさまりなどミリ単位のものから、街づくりの都市的なものまで、スケール感においても幅があります。

ただその両極が独立しているのではなく、小さなスケールの効果が、大きなスケールの印象に影響を与えることも多々あります。

 

住まいづくりも同じです。

平面図は分かりやすく、機能的(動線等)検討にはもってこいですが、高さの検討と体感はとても密接です。

同じ平面図でも立面図、あるいは断面図や展開図の高さ寸法のおさえ方が、いかに豊かな体感をつくってくれるか分かります。

建築の醍醐味は立体空間にあるとも言えます。

 

 

稲が視線より高く育つ植物だったら、きっと田園風景が持つニュアンスや、そのもの自体もきっと違うものになっていたのではないでしょうか。

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