高田清太郎の言葉

世界が最初につくられた時にあったのは「ことば」です。ものづくり達の使命は、無から有を生み出すことであると言います。言葉は創造の原点であり命の源でもあります。声になる言葉もあれば音のしない言葉もあります。目に見える言葉もあれば見えない言葉があります。言葉にはならないうめきのような言葉もあります。形になる前の無形こそ、豊かな言葉を宿しています。空間の昇華は、いかに豊かな言葉を持っているかに帰依します。ノンフィジカル(無形)なイメージをいかにフィジカライゼーション(形化)するかが、大きなテーマです。言葉、それは創造そのものなのです。人々を励ますことば、動物たちと交わすことば、大自然を目の前にして畏敬の念にとらわれることば。ことばこそ人に命を与える泉です。住まいづくりをする時に大切にしなければならないのが我が家の想いということばです。
人類史をひもとくと「居場所獲得の歴史」だということに気づきます。人は三次元的空間としての居場所だけでなく、心の平安や地位・名声といった精神的居場所も求めます。住まいは、居場所そのものです。そこに住む人の究極の命題が「住まい=その人・その家族だけの居場所づくり」だと思います。にもかかわらず、いくらでも代用がきくような住まいがあります。“夢ある我が家だけの住まいづくり”と言いつつ、規格的な家を選別しているだけの風景も見かけます。提供する側は、表面的な住まいを並べて競争している気がします。これはとてもざんねんなことです。100人いれば100人通りの居場所がある。人は、かぎられた人生のなかでそれを探す旅をしているのです。
わたしは住まいを“巣舞”と書きます。「巣」は目に見える形、「舞」は目に見えない想いと定義します。建築はかならず形をともないますが、形ありきではいけない。想いありきです。形にする前に充分すぎるほど想いを出し切り、整理しないと、満足のいく家はできない。想いを尽くした結果の形でなければならないのです。“出来上がった形”のなかに住むのではなく、わたしたちはまず「想いのうちに住む」ものなのです。「いったいどこに住むのだろう」「どのように住まうのだろう」と考えていく過程で、自分自身の想いを探りあてる。あるいは、想いをどんどん育んでいく。わたしたちの仕事は形をつくることの前に、まさに施主様の想いを育んで明らかにしていくことなのです。人は、家という箱の中ではなく、想いの中に住むのです。
今世紀初めの元旦、わたしは自分に問いかけました。「21世紀はどっちの方向?」と。その問いの答えは「21世紀はDOCIの方向!」でした。“?”を“!”に変えただけ。面白いです。「DOCI」の「D」はデザイン&ドリームの頭文字です。21世紀はデザインがすべてのベースになります。「O」はオリジナリティ&オーガニック。「C」はコンセプト&コミュニケーション。「I」はアイデンティティ&イマジネーション。いずれも現代の建築に欠かせないキーワードです。とくに最後の「I」。建築はイメージありき。イメージは言葉であり、それは創造そのものです。住まいづくりをクリエイティブに楽しむ。そんな時代なのだと思います。
「間知」と書いて「まち」と読んでいます。住まいづくりをするときは我が家だけのことを考えがちですが、実際には隣地との関係が大切な条件になります。家々が連棟を重ねると街ができあがります。そのときに隣棟との間合いはとても重要です。適度な“間”を“知”ることによって快適な居場所をつくることができます。「我が家の裏側は隣の正面」という言葉があります。“間”を“知”るという考え方があれば、お互いの距離感を大切にして不快な関係を避けることができるでしょう。間知づくりの視点をもてば、わたしたちの心の拠りどころである風景や景観を破壊することもありません。建築とは破壊をともなう行為です。だからこそ、わたしたちは間知という見識をもってまちづくりに取り組まねばならないと強く思います。
手前味噌になりますが、高田建築事務所には「楽しくて面白い住まいをつくるよね」という評判があります。そこであらためて「楽しい」「面白い」とは何なのか?を考えました。まず「楽しい」という字は「白」と「木」と「点々」に分解できます。これは白木に人びとが集まっている状態、つまり自然のままの姿といっていいでしょう。ポイントは「白」です。一方の「面白い」は「面が白い」と書きます。こちらもポイントは「白」。勝手な解釈かもしれませんが、「白」はさまざまなことが行われる可能性を秘めたステージだと思いませんか。白は何色にでもなれる。どんなものにも変身できる。「白」はまさに可能性の原点だと思うのです。
継続は力なり、といいます。本当にそうだと思います。「succeed」には“続く”という意味があります。そして「success」は“成功”です。わたしが思うのは、継続・継承することは、そのこと自体が成功であるということです。それほどまでに続けることは困難なのです。高田建築事務所は約40年(親会社であるタカモクは66年)の社史を刻んできましたが、まだまだですね。100年企業をめざし、またその先の100年も継続できる企業になりたい。たとえば経営理念に込めた「豊かな人間性を育みたい」という想いは、働く人の人間性を度外視していたら永続企業にはなれないと考えるからです。わたしたち自身の「succeed=success」への挑戦はまだまだ続きます。
「永遠の今」なる言葉があります。今の連続が永遠であるということです。歴史は時間の“流れ”です。同じく人生も“流れ”であり、人の心もそうです。つきつめれば、建築とは“空間の流れ”そのものといえます。流れを失って、固定された四角の箱の中に人が閉じ込められると「囚人」になってしまいます。それはわたしにとっては死の世界です。だからこそ空間をつくるときは自由線を使いたい。むしろ、自然界の中に直線というものはほとんど存在しないといったほうがよいでしょう。人の心の流れ(居場所)をつくるのは空間の流れです。そして、その空間の流れは、力の流れ(構造)が守る。わたしは大学生時代にそのような考えに至って、それ以来「流れ」なる言葉に魅せられ、「Design is Simple Space is Flowing」という言葉をよく使いつづけてきました。デザインはシンプルであるべきという考え方は、流れをつくる行為のベースにあるものです。
「CANDO」は造語です。カンドーと読みます。つまり、感動です。「Can do Creation」というフレーズは、つまり“感動創造”という意味で使ってきました。誤解を恐れずにいえば、わたしたちは住まいをつくっているのではない。感動を創造(クリエイション)しているのです。「高田建築事務所はお客様に感動をあたえる会社でありつづけよう!」。そんな強い決意をもってお客様一人ひとりの住まいづくりをお手伝いしたいのです。ちなみに「Can do」は実現することができる、という意味です。わたしたちが強く思えば、感動をクリエイションするという大きな仕事もかならず達成できる。そう信じています。
住まいづくりにおける「アフターサービス」という言い方がどうもしっくりきません。わたしたち建築屋目線の物言いだからです。施主様にとってはアフターではなくスタートでしょう。というのも、建設側から見ると確かにお引き渡しをして一段落ついているのかもしれませんが、お客様はここから新しい人生をスタートするのです。メンテナンスなどのサービスを“建てた後の奉仕”と定義するのは、いわば「契約上はここでいったん終了ですが、まぁ何かあればサービスさせてもらいますよ...」という感が強く残ります。わたしたちとお客様のおつきあいは、建てた後も生涯つづくのです。そのはじまりという意味でも「スタートサービス」と呼ぶのが正解だと思います。
どんなに七色の虹が美しくても、それを描いて見せなければ、その美しさは伝わりません。どんなに素晴らしい物語をつくっても、それを口にして語らなければ感動は生まれないでしょう。わたしはよく「物語のある住まいをつくろう」と話しますが、せっかく紡いだ物語も語らなければ単なる物です。物語というのは、語ってはじめて成立するのだと思います。何事も想っているだけではだめです。想いを言葉にして、伝えることが大事です。わたしたちは建築屋ですが、建築物をつくることに情熱を燃やすのと同等に、そこに込めたコンセプトやストーリーを伝える努力をしなければいけません。語ることの大切さを肝に銘じたいです。
そもそも建築というのは、コンセプトを打ち立てストーリー(物語)を形にしていく行為です。住まいでいえば施主様の我が家物語:マイストーリーをつくるということ。わたし流にいえば「住まい=巣舞」の“舞ストーリー”です。まずは想いありきです。想いがかたちになり、我が家の物語(舞ストーリー)を誕生させる。そして我が家の想い=舞は街の景観になり、街の物語になります。景観になるということは私だけの物語ではなく第三者の景観にもなる。すなわち「hisストーリー」といっていいでしょう。そして時を刻み「history(歴史)」になるのです。住まいの物語はやがて街の歴史になり、文化として醸成されていきます。歴史のなかの建築物は、結果的に文化をつくっています。住まいづくりのひとつひとつは、じつは 街の文化を生み出しているのです。
夢を育みつづけることは使命です。わたしたちはお客さまとともに夢を探し、共にかなえ、共に育みつづけます。それはわたしたちの夢でもあり、それを継続することこそ使命です。「夢を描こう!夢を育もう!夢を実現しよう!」。これは夢の実現三段階です。わたしは 「巣舞づくりは夢づくり」と提唱してきましたが、まさに目に見えない想いを目に見える形にしていくことがわたしたちの職分です。“巣舞人様”の多くの夢を描き、大きな夢を育むのです。「はぐくむ=育む=育夢」と気がついたときに「巣舞づくりは育夢創造」という言葉が生まれました。