40年ほど前まで、家を建てるのに使用された木材のほとんどは国産材でした。材木屋のせがれに生まれた私は、山から山に掛けられた鉄索(リフトの親ロープみたいなもの)にくくり付けられて切り出される場面に何度も立ち会いました。大変手間のかかる仕事でも、馬そりで木を運びだせる冬は最も良い季節でした。機械力のない時代、新潟の雪は、そんなところでも役立っていました。また、傾斜のきつい所では、人間が丸太を背負って山を下りたのですから、その労苦を思うと本当に最敬礼ものです。その後、高度成長期に入り、人件費が高騰して、国産材から安価な輸入材に変わりました。現在のように建築用材木のほとんどを、輸入材に頼らなければならないのは、山間森林面積が70%
近い日本にとって、なんとも妙な話です。一軒の家を建てるのに必要な材木は、延べ面積150平方メートル(45坪)の住宅で40立方メートル前後。原木に換算すると直径50センチメートル、長さ12mの木が約20本必要になります。一本の年輪が100年とすると、延べ2,000年もの年月を消費することに成るのです。木の消費量を考えただけでも20年ほどで、壊すような家を建ててはいけないことが分かります。「資源を大切にしよう」は、決して掛け声だけでは済ましてはならない問題です。幸い、建築用資材の中で木材だけは、唯一再生のできる資源だと言われます。もちろん、きちんとしたルールと管理のもとでの話です。木を切り倒して建築材にするまでには十数日で済みますが、植林して、建築材として使用できるまでには、少なくとも50~100年もの年月が必要です。木は、二酸化炭素を取り込んで、酸素を供給するという、この地球と生き物にとってかけがえのない生命維持の存在なのです。この基本原理を、建築主も工事する人も今やすっかり忘れてしまっています。すべてにスピードが優先される現代ですが、「破壊のスピードは早く、再生のスピードは遅い」という事実と「木の再生には、破壊の何倍も何十倍もエネルギーが必要」ということを忘れてはいけません。立派な庭がなくても良いから、「家を建てたら、木を2本植えましょう」。自分の子や孫のためにシンボルとして1本、そして、地球環境のためにもう1本。